トゥー・キッズ・ア・デイ イスラエルの日常的暴力

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NHKは優れた教育映画作品を対象に日本賞を授与しているそうで、今年は50回目を迎えるという。そこでグランプリに輝いた作品をEテレで放映した。「トゥー・キッズ・ア・デイ」というタイトルだ。イスラエルにおいて、日常的に行われているパレスチナ人の逮捕監禁をテーマにしたもので、なかでも14歳未満の子どもを対象とした逮捕監禁をこの映画は取り上げてる。それを見ると、ヨルダン川西岸で暮らすパレスチナ人の厳しい境遇と、かれらを日常的に迫害しているユダヤ人の残酷さが伝わってくる。

映画を製作したのはイスラエルのユダヤ人だそうだ。映画は、14歳未満の子どもが、逮捕監禁された後厳しい尋問を受ける様子を映し出しており、イスラエル当局にとっては不都合な映像だ。だから、ほんものではないのではないかと思ったりもするのだが、どうやら実際の状況をそのまま写したもののようだ。それを見ると、子どもの人権を無視した残忍な取り調べというほかはなく、イスラエル側の非人道的な姿勢がむきだしのかたちで伝わってくる。

子どもらを逮捕監禁しているのはイスラエル軍だ。イスラエル軍の見解では、西岸地区はイスラエル軍が占領しているのであるから、パレスチナ人を軍の法規で裁くのは当然ということになる。パレスチナ人を逮捕監禁するのはユダヤ人の安全を確保するためであり、そのユダヤ人に対して批判したり反抗したりする人間は容赦なく攻撃する。子どもであっても容赦しない。むしろ子どもだからこそきびしく対応し、二度と反抗する気力を奪うことが理にかなったやり方である、そのようにイスラエルのユダヤ人は考えているようだ。

西岸への入植者へのインタビューも紹介されている。その入植者は、自分らは正当な権利として入植しているのであり、それに逆らうものは排除するのが当然だと思っている。パレスチナ人の土地を侵略しているという意識は全くない。

この映画はガザの大虐殺が起きる以前に作られたものだ。この映画の中のイスラエル側の姿勢を見る限り、かれらがパレスチナ人を無差別に虐殺することになんらやましさを感じない理由がわかる。この映画はイスラエル国家の非人道性を厳しく批判するものになっている。それをイスラエルのユダヤ人が作ったことに驚きを感じるが、そんな映画を放送したNHKのスタッフにも敬意を感じる。

なお映画のタイトルは、日に二人の子どもたちという意味だが、これは年間に逮捕監禁されているパレスチナ人の子どもの数を日数で割ったものだ。毎日平均二人ずつ、パレスチナ人の子どもがユダヤ人によって迫害されているわけである。こういうのを、日常的暴力というのであろう。イスラエル国家は、そうした日常的暴力のうえに成り立っているわけだ。





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