大川原化工機冤罪事件について国・都に賠償命令

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大川原化工機冤罪事件については、小生は雑誌「世界」の最新号(2024年1月号)に寄せられた文章「大川原化工機『冤罪』事件の深層」(石原大史)によって知った。これは事件を取材したNHK記者によるもので、警視庁公安部による恣意的な犯罪捜査を厳しく批判したものであった。事件の概要と批判の内容については、当該文章にゆずるとして、その事件をめぐって起こされていた損害賠償請求訴訟の一審判決が12月27日に東京地裁で出されるというので、それを注目していた。地裁は、国(検察庁)と都(警視庁」の責任を認め、賠償を命じる判決を出したそうだ。賠償額は国が約1億5800万円、都は約1億6200万円である。

この事件は、今年6月に東京地裁でなされた証人尋問のなかで、捜査にかかわった刑事が「まあ、捏造ですね」と発言し、警視庁の捜査を全面的に否定したことがもとで、起訴取り消しという異例の事態に発展したものだった。だから、争点はなかったわけで、あとは責任の度合いをどう考えるかということにあったが、国も都も自らの責任を否定していた。それに対して裁判所が責任を認めて、それに見合う賠償を命じたということだ。

上述の文章は、事件の背景には、公安部の組織防衛の思想が働いていたと指摘している。たまに大きな事件がないと、組織そのものの存在意義が疑われることになるので、たまには大きな事件を解決して、世間にその存在をアピールしたい。実際に事件が起きなければ、でっちあげればよい。そんな不埒な考えが警視庁の公安部にはあったというようなことを、その文章は指摘していた。

それにしても恐ろしい話である。全く関係のない会社や個人が、警察の都合によって恣意的に犯罪者に仕立てられてしまうのである。このケースでは、11か月に及ぶ収監機関の間に、胃がんが見つかった元会社顧問が、適切な治療を受けられずに死亡するという事態も起きている。これでは、日本の捜査当局には人権感覚が欠けていると批判されても仕方がないだろう。





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