ヘンリー六世第二部 Hollow Crown シリーズ第五作

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2017年劇場公開の映画「ヘンリー六世第二部(Henry VI Part 2)」は、BBCの放送番組 Hollow Crown シリーズ第五作。薔薇戦争を描いている。原作の第二部後半から第三部をカバーしているが、ケイドの乱はとばして、いきなりヨーク側の反乱からはじめている。そのヨークとランカスターは勝ちつ勝たれつを繰返し、最後にはヨーク側が勝利し、ヘンリー六世が背虫のリチャード(後のリチャード三世)によって殺されるところで終わる。前編これ暴力的な戦いのシーンで満ちている。

映画を盛り上げている最大のキャラクターは、王妃マルグリットと背虫のリチャードだ。緒戦の戦いに敗れたヘンリー六世が、ヨークに王権を移譲したことに怒ったマルグリットは、ランカスター側の軍を率いてヨークと闘う。それに勝利すると、ヨークの首長リチャードとその末子のエドモンドを惨殺する。とくにリチャードの殺し方は陰惨を極める。それに怒ったヨークの三人の息子たちは、復讐を誓う。その復讐の先頭に立つのが背虫のリチャードなのだ。この背虫のリチャードは、同じシリーズの次作「リチャード三世」でも同じ俳優が演じている。

ヘンリー六世自身は、徹底的に情ない男として描かれてる。王権をあっさりと譲り渡し、妻のマルグリットと多くの貴族たちに愛想をつかされる。もはや彼が味方をまとめるのではなく、マルグリットがまとめるのである。その挙句に、戦場から脱落して荒野を放浪する。その放浪の様子は、リア王のそれを思わせる。半裸の姿で放浪し、羊たちの群れを見て、いっそ羊飼いになったほうがましだと嘆息。だが、羊飼いにはなれず、その羊飼いによって敵方に身柄を渡されてしまうのだ。

ヨークとランカスターの戦いは陰惨を極める。リチャードの息子たちは、父親の仇のクリフォードをなぶり殺しにする。父親が殺されたのと同じような残虐な殺し方をするのだ。それを先導するのは、やはり背虫のリチャードである。殺されたクリフォードの首を見たマルグリットは錯乱状態になる。かけがいのない愛人だからだ。彼女にとってもう一人かけかいのない息子も、やはりヨークによって殺されてしまう。その時にも彼女は錯乱状態になる。そんな彼女をヨーク側は、殺しはせずに、フランスに送り返すのである。

戦場の場面では、父親が息子を殺し、息子が父親を殺す有名なシーンがある。それぞれ父と子が別陣営に分かれて戦っていたのだ。内戦は家族の絆をも引き裂くのである。

ヨーク側から最初に王位についたエドワードは、好色が災いして権威にかける人物だ。そのため弟にまで離反される始末。そんな体たらくだから、やがてもう一人の弟である背虫のリチャードによって王位をはく奪されるのは無理もない、そんなメッセージを残しながら映画は終わる。






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