韓国映画「インサイダーズ/内部者たち」:暴力礼賛的なアクション映画

| コメント(0)
korea.insider.jpg

2015年の韓国映画「インサイダーズ/内部者たち(ウ・ミンホ監督)」は、韓国風のアクション映画である。韓国人は暴力映画が好きらしく、この映画も暴力礼賛的な描き方をしている。それも単なる暴力ではなく、韓国特有の観力構造にからませてある。韓国の政治は、権力をめぐる赤裸々な戦いにいろどられているが、この映画はこうした権力闘争を、政財官一体の国民的な病理として描く。そこが並の暴力映画とは違うところだ。だが日本人にとってはかなりな違和感がある。日本人が映画に求める暴力性は、やくざ映画や北野武の映画に代表されるような、純粋な人間的暴力であり、政治や社会批判に結びつくような映画は、不純な要素を含んだものとして毛嫌いされがちである。

大統領の座を求める政治家、その資金源として政治家を支える財界の大物、マスメディアを通じて世論工作を図るフィクサー、そういう連中がぐるになって自分たちの利益を追求する。その犯罪性に気づいて、かれらを正義の裁きにかけようとする検事、その検事と悪党たちの間に入って、微妙な役割を務めるやくざ者(「ごろつき」と呼ばれている)。その三者の絡み合いとして映画は展開する。最後には、やくざと検事が手を結び、悪党どもの悪事をみごと白昼にさらして溜飲を下げるというような内容である。

映画の筋書きが現実の韓国社会をどれほど再現しているのは、よくはわからない。おそらくフィクションなのだろう。ではあるが、いかにもありそうな風に見えるのは、韓国社会にそのような体質があり、それを韓国人自身が認めているからだろう。日本でも、政財官の癒着と汚職を描いた作品はあったが、そういう作品は或る程度事実関係の取材の上になりたっており、全く荒唐無稽というわけでもなかった。ところがこの映画に描かれた韓国社会のあり方は、それがもし事実ならばとんでもなく腐敗したものといわねばなるまい。だから一応、フィクションであり架空の話だということにしているのだろう。

韓国のアクション映画には、見るに堪えないグロテスクなものが多い中で、この映画は比較的マシなアクション映画と言えよう。ひとつ気にかかったのは、韓国人の暴力好みである。韓国人は日本によって長らく支配された歴史があるが、それは韓国人が無力であって、反撃するための暴力をふるう能力がなかったからだろう。ところがこの映画の中の韓国人は、正義にためだと言って暴力に訴えている。それだけの甲斐性がかつての韓国人にもあったなら、日本人によって一方的に屈服させられることはなかったのではないか。






コメントする

アーカイブ