イサベル・デ・ポルセール ゴヤの肖像画

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ゴヤは宮廷画家として貴族たちの肖像画を描いたのだったが、晩年には商人の肖像画も描いた。「イサベル・デ・ポルセール」と題されたこの肖像画は、その代表的なものである。モデルは富裕な商人アントニオ・ポルセールの若い妻である。ゴヤは、ゴドイを介してポルセールと近づきになり、たびたび饗応された。これはそのお返しとして制作されたといわれる。

イサベルは、夫より20歳年下で、この絵のモデルとなったときには40歳をちょっと超えていた。この絵の中の彼女はもっと若々しい印象である。商人の妻らしく、くだけて粋な雰囲気をただよわせているところは、マハに通じるものがある。

やや斜め向きの姿勢で、顔を反対側にむけ、観客のほうではなく、あらぬ方を見つめている。その大きな目には自信がこもっている。頭から肩にかけてかぶっているのはマンティージャといって、当時スペインで流行した装飾用の衣装だそうだ。

「裸のマハ」が裸体画の傑作だとすれば、これは女性の肖像画の傑作といえる。

(1806年頃 カンバスに油彩 82×55㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)






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