
「異端審問(Escena de Inquisición)」と題されたこの作品は、「闘牛」、「狂人の家」、「むち打ち苦行者の行進」とともにシリーズを構成する。このシリーズでゴヤは、スペインの古い因習を批判したのだが、この作品ではカトリックによる「異端審問」の風習を批判した。この風習は、15世紀の半ばに始まり、ナポレオンの時代には廃止の動きもあったが、フェルナンドの王政復古にともない、復活した。
異端審問は、カトリック教会を舞台にして行われることが多い。被告は、尖がり帽子とちゃんちゃんこのようなものを着せられ、裁判官の前で罪の告白をさせられる。その後、悔い改めの誓約をしたうえで、街を引き回された。
この絵は、四人の被告が描かれている。被告はひとりずつ台の上に乗せられ、罪を告白する。裁判官は法服ではなく、世俗の服を着用している。一応法官であることを強調しているのであろう。
裁判官と被告ら前景の人物は、くっきりと姿が浮かびあがるように描かれる一方、背景の人々はあいまいな描き方をされている。コントラストを強調するためである。
(1812~1819年 板に油彩 46×73㎝ マドリード、サンフェルナンド王立芸術アカデミー)
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