ノルウェー映画「ウトヤ島、7月22日」 右翼のテロ事件

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2018年のノルウェー映画「ウトヤ島、7月22日」は、2011年7月22に日に起きた右翼の連続テロ事件のうち、ウトヤ島で起きた事件を描いた作品。この事件は、たった一人の右翼の男が引き起こしたもので、まずオスロ市内の政府庁舎を連続爆破したのち、夕刻にはウトヤ島でキャンプを張っていた数百人の青年たちに襲いかかり、無差別に銃殺したというもの。全体の規模としては77人の死者と319人の負傷者を出した。そのうち69人がウトヤ島で殺されたという。このショッキングな事件が、たった一人の男によってなされ、それに対して警察が有効な対応をとれなかったということで、世論の厳しい批判を巻き起こした。もっとも警察当局は、適切な対応をとったと強弁して、涼しい顔をしたそうである。

この映画は、そうした事件の背景にはほとんど触れておらず、ただただ正体不明の犯人が大勢の青年たちを無差別に銃殺する恐怖を描くばかりなので、事件の背景をわかったうえで見ていないと、ただのホラー映画に見えてしまうだろう。

映画は、島でキャンプを張っている青年たちの様子を写すところから始まる。このキャンプは、労働党政権の肝いりで行われ、それが右翼に狙われる原因となったのだが、映画はそうした背景には触れない。ただ、一人の女性が政治家を目指しているというところに、このキャンプの性格が垣間見られる程度である。映画は、その政治家志望の女性の視点から描かれる。

その女性は、妹を連れてきており、その妹になにかと干渉する。それに反発した妹がすねる真似をしたりする。そうしているうちに、キャンプ場がパニックになる。誰か正体不明のものが、銃を乱射して青年たちを無差別に殺害し始めたためだ。恐怖にかられた青年たちは、蜘蛛の巣を散らしたように逃げ惑う。主人公の女性カヤも仲間と一緒に逃げ惑うが、そのうち、妹の安否が気になって、探し回るうちに、銃弾が命中して倒れるのである。彼女が死んだかどうかはっきりさせないで映画は終わる。

そんなわけでこの映画は、パニックに陥った青年たちの恐怖感を描写することに主眼を置いており、事件全体を客観的に見ようとする視点はない。最後に、この島で死んだ青年たちの数が、字幕で紹介されるばかりである。






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