狂人の家 ゴヤの風刺画

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「狂人の家(Casa de locos)」と題されたこの絵は、「むち打ち苦行者の行列」、「異端審問」、「闘牛」とともにシリーズを構成する。この作品は、ゴヤの郷里であるサラゴサの精神病院をモチーフにしたものである。ゴヤがなぜ精神病院をモチーフに取り上げたか、よくはわからない。一説には、この頃ゴヤは病気のために、耳が聞こえなくなったり、家族関係が悪くなったりと、かなりのハンデを抱えていたというから、心を病んだ人間に、惹かれるものを感じたのかもしれない。

かなり広い部屋に、大勢の患者が収容されている。光は、高いところにある窓から差し込むだけなので、部屋の大部分は暗くて陰気である。その陰気な部屋に大勢の患者が、それこそすし詰めにされている。

患者たちには、奇異な行動をしているものがあり、また全裸のものがいたり、いかにも狂人らしさを感じさせる。画面中央の男は、全裸でファイティングポーズをとっている。ボクサー上がりなのだろうか。その左手の男は、鳥の羽を頭にかざり、なにやら演説している様子である。その男のさらに左手には、黒い服を着た二人の男がいて、部屋の中の様子を眺めている。

そのほか、さまざまなポーズをとっている男たちがいるが、いずれも自分自身の中に閉じこもっているようで、他人を意識する気配は見られない。

(1812~1819年 板に油彩 46×73㎝ マドリード、サンフェルナンド王立芸術アカデミー)






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