松岡錠司「東京タワー」:リリー・フランキーの半生

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松岡錠司の2007年の映画「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン」は、リリー・フランキーの自叙伝を映画化した作品。リリー・フランキーは、「そして父になる」や「万引き家族」など、是枝正和映画の常連として知られているが、エッセーやイラスト、ラヂオ放送などをこなすマルチ・タレントだそうだ。その彼が、若くして書いた半生の自叙伝が大変話題となり、テレビドラマになったり映画化されたというわけだ。

副題にあるとおり、一人息子とその母親との関係が中心、それに時たま父親が絡んでくる。要するに母子の強い結びつきがテーマだ。それが数百万部のベストセラーになったということは、いまの日本人の間に親子の絆をいとおしがる風潮があるからか。

主人公の一家は北九州の小倉で暮らしていたが、夫の暴力に耐えかねた妻が、一人息子をつれて母親が暮らしている実家に戻る。実家は筑豊の炭鉱地帯にあり、いまはさびれた町だ。そこで妻はアルバイトをしながら、一人息子を育てる。彼女にとっては、この一人息子だけが生きがいなのだ。

一人息子は、はやく自立したいと思い、大分の美術高校に進学し、ひとり暮らしを始める。だが勉強はそっちのけで、遊んでばかりいる。怠惰な生活は東京の美術大学に進学しても変わらず、母親に金をねだりながらふしだらな生活を続ける。だが、母親が老いて、病気がちになると、俄然孝行心が芽生えてきて、母親を東京に引き取り、一緒に暮らすのだ。かくして晩年の一時期に、母親に孝行できたことが、息子の心の支えになる、といったような内容だ。

そんな具合だから、かなりセンチメンタルな映画である。こういうセンチメンタリズムというのは、すでに過去のものと思っていたが、実際にはそうではなく、日本人はあいかわらず情緒的な傾向が強いということらしい。

息子をオダギリ・ジョーが演じ、母親を樹木希林が演じている。その希林の若いころを彼女の実の娘内田也哉子が演じている。実の母子だけあって、雰囲気がよく似ている。






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