アリエータ医師に看護されるゴヤ

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ゴヤは、1819年にマドリード郊外のマンサレナス川の岸辺に「つんぼの家」と称された別荘に移り住んだが、その年に腸チフスにかかって死に損なうという目にあった。その際に、友人の医師アリエータが献身的な看護をしてくれたおかげで、ゴヤは一命をとりとめた。この絵(Goya curado por el doctor Arrieta)は、自分に献身的な看護をしてくれたアリエータへの感謝の気持ちをこめて翌1820年に制作したものである。

血の気の失せたゴヤの表情は、いまにも死にそうな様子である。背後からそのゴヤを抱きかかえ、コップからせんじ薬を飲ませようとしている医師アリエータは、いかにも誠実な顔つきをしている。

暗い背景から浮かび上がった二人の背後には、黒い人物像がいるが、これはおそらく疫病神の隠喩だろう。

ゴヤの自画像にもなっているこの絵は、晩年のかれの消息の一端を知る上での手掛かりにもなる。ゴヤはこの病気から回復後、最後の大作「黒い絵」のシリーズの制作にとりかかる。

(1820年 カンバスに油彩 117×79㎝ ミネアポリス美術研究所)






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