ナポリの壁 トーマス・ジョーンズの風景画

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「ナポリの壁(A wall in Naples)」と題されたこの小品も、ナポリの街景シリーズの一つ。これは、背景をほとんど描かず、もっぱら建物の壁を詳細に描きとったものだ。ジョーンズのナポリ街景シリーズの作品群は、ぶっきらぼうな印象のものが多いが、この作品はとりわけそうである。

表面が剥がれ落ち、ところどころ穴が開いた建物の壁を微細な部分まで丁寧に描いている。壁の面積の割には、窓の割合が少ない。しかも一つ一つの窓が、申し訳程度についているにすぎない。

画面中央の窓には、外側に手すりがあって、そこに洗濯物のようなものが吊り下げられている。白っぽく見える包帯のようなものは、どんな用途に使われるのか。いずれにしても、ナポリの人々の生活感が伝わってくる作品である。

(1782年頃 紙に油彩 11.4×16㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)






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