歴史家論争2.0とドイツの転落

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イスラエルによるガザのジェノサイドに関連して、ニクァラガがドイツをICCに提訴した。提訴理由は、ドイツ政府がジェノサイド条約に基づくジェノサイド防止義務を怠っているというものである、なぜニクァラガが、イスラエルの最大の支援国であるアメリカではなく、ドイツを提訴したのか。わかりにくい部分があるが、ドイツもアメリカにおとらずイスラエルを支持しており、また、現在でも多額の軍事援助を続けているから、ドイツの責任を問うということについては、一定の理解はできる。なにしろドイツは、いっさいイスラエルを批判しないし、というか批判ができないでいる。それはなぜなのか、その謎に迫った小論が雑誌「世界」の最新号(2024年6月号)に掲載されている。橋本伸也著「歴史家論争2.0とドイツの転落」と題した文章である。

この文章を読むと、ドイツがイスラエルを批判できないのは、自らにそのようなことをできなくするような「教理」を課しているからだというふうに伝わってくる。その教理(カテキズム)には、「イスラエルの安全保障はドイツの国家存立根拠/国是の一部である」とか、「反シオニズムは反ユダヤ主義である」といった内容が含まれ、ドイツはイスラエルのどんな行為に対しても、無条件で支持してしまうということらしい。

なにしろ、ハーバーマスのようなドイツを代表する知識人でさえ、今般のガザのジェノサイドに目をつぶり、ハマスを一方的に非難しているありさまである。学者のなかには、イスラエルのジェノサイドを批判するものもいるようだが、それは少数派で、大部分はイスラエルを支持し、ハマスを攻撃している状況である。

そうした風潮はなかなか変わらないようだ。著者の橋本も、「ドイツにイスラエル批判を求めても虚しさだけが漂ってくる」といって嘆いている。





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