セリーヌ・シアマ「ガールフッド」 フランスで暮らすアフリカ人少女の青春

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セリーヌ・シアマの2014年の映画「ガールフッド(Bande de filles)」は、フランスで暮らすアフリカ人少女の青春を描いた作品。移民としての彼女の環境は非常に厳しいと思うが、彼女のフランス社会とのかかわりはほとんど触れられず、もっぱら黒人との間のかかわりが描かれる。彼女は中学校の卒業を迎えても高校へ入ることもできず、かといって働く気にもなれない。そこで、黒人少女たちの不良グループと付き合いはじめる。そのうち自信が出てきて、恋人もできる、といったような内容の映画だ。

セリーヌ・シアマは、思春期の少年少女の感性を描くのが得意で、この映画もそうした範疇に入る作品だと思うのだが、その思春期の少年少女をアフリカからの移民である黒人に設定したことで、多少むつかしい問題に直面したのではないか。移民を描くなら、本国人(フランス人)との間の葛藤が当然問題とはるはずだが、この映画の中では、フランス人とのかかわりはほとんど省かれている(ただ一つ、白人の少女から金をゆする場面があるだけ)。黒人同士で争い合ったりつるんだりしているのだ。その点は、ドイツに暮らすトルコ人たちを描いたファティ・アキムと同じだ。アキムもドイツ人とのかかわりはほとんど描かず、もっぱらトルコ人コミュニニティの内部を描いていたものだ。

少女が高校に入れないのは、家が貧しいからだろう。中学校の指導教員は、頭から就職させようと考えている。その指導教員はフランス人だと思うが、顔は見せず声だけが聞こえてくる。少女はみなと一緒に高校に行きたいと訴えるが、教員は聞く耳をもたない。そんなところに、アフリカ人差別の一端がうかがわれる。

劇的な筋書きの展開はない。四人兄弟で、兄は暴力的な雰囲気だ。しかしたいした騒ぎを引き起こすわけでもない。少女の不良グループが他の不良グループと争う場面が唯一劇的なシーンである。不良少女なら、性的な搾取の対象になりやすいと思われるが、この映画の中の少女たちには、そうした苛烈な境遇は感じられない。






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