ヨハン・ハルムスの肖像

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ヨハン・ハルムスは妻エディットの父、シーレにとっては義父である。ヨハンは、娘がシーレと結婚することに反対だった。少女にヌードのモデルをさせたり、ふしだらな生活ぶりに呆れていたからだ。だが、娘は強引に結婚してしまった。シーレがこの義父とどんな関係だったかは、よくわからない。しかし肖像画のモデルになってもらったくらいだから、ある程度は親しくしていたのだろう。

それにしても、この絵の中のハルムスは精彩がない。いかにも老人じみた顔は、瞳が見えないせいもあって、表情を感じさせないし、姿勢も不安定きわまりない。かれは肘掛椅子に座っているのだが、いまにもずり落ちそうなほど、姿勢が定まっていない。座っていると言うより、倒れ掛かっているように見える。

黒く塗りつぶした背景から、ほぼモノクロの衣装に包まれたハルムスが浮かびあがる。人物と椅子と背景との関係は、明度のコントラストにハリをつけることで表現している。こういう暗い雰囲気の絵には、モノクロのコントラストがきいて見える。

(1916年 カンバスに油彩 138.4×108㎝ ニューヨーク、グッゲンハイム美術館)





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