グレタ・ガーウィグ「レディ・バード」:少女の青春

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グレタ・ガーウィグの2017年の映画「レディ・バード(Lady Bird)」は、思春期の少女が大人になる過程を描いた青春映画である。日本では、少女を主人公とした青春映画は、無知な子供だった少女が、大人の人間関係や社会的なルールを身に着けていく過程を描くものが多く、恋愛が絡んでいてもプラトニックなレベルにとどまるのが普通だが、この映画は、少女のセックスを正面から取り上げ、大人になることはセックスを思い通りにするようになることだというような描き方である。やはり民族性の相違だろうか。

主人公は、カリフォルニアのサクラメントに住む少女。彼女は、マクファーソンという姓なのだが、レディ・バードと自称し、他人からもそう呼ばれることを望んでいる。レディ・バードとは、表向きには「テントウムシ」という意味だが、スラングでは「尻軽女」という意味もある。なぜそんな言葉を選んだのか、よくわからない。彼女はもともとは尻軽な少女ではなかったのだが、いざセックスをする段になると積極的になり、男の上にまたがって尻を振るところは、やはりレディ・バードという名にふさわしいかもしれない。

彼女は高校三年生で、大学受験を控えている。母親は、経済的な理由から地元の公立大学に行ってほしいというが、本人は東海岸の大学に行きたいと思っている。そこで、ものわかりのいい父親を抱き込んで、東海岸の大学に入る画策をする。その画策は成功して、彼女はニューヨークの大学に入れるのだ。

それまでの間の彼女の生き方が淡々と描かれる。高校では仲のいい女友達と演劇サークルに入ったり、そのサークルの男子と仲良くなったりする。彼女はその男子をまんざらでもなく思うのだが、じつはその男子はゲイなのであった。かれが便所の中で他の男子といちゃついているところを、彼女は見てしまうのだ。幻滅した彼女は、他の男子と仲良くなる。初めてのセックスはその男子とするのだ。彼女は相手もヴァージンだと思っていたのだったが、実は過去に六人の女とやったときかされ、げんなりする。経験が豊富なわりにはセックスが下手で、あっというまに終わってしまうのだ。

そんな具合に、アメリカの白人少女にはよく見られるようなふるまい方が、ややコミカルに描かれている。こういう雰囲気の映画をアメリカ人は非常に好むらしく、この映画は大ヒットしたそうだ。面白いのは、彼女がサクラメントを田舎町と思っていることだ。サクラメントは、カリフォルニア州の州都であり、それなりに格式が高い街だと思うのだが、彼女にとっては、退屈な田舎町なのである。






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