
これ「パンドラ(Pandore)」はその一つ。樹木を背景にした花園の中に、小さな箱を両手で抱えた姿のパンドラが描かれている。パンドラは顔をうつむけて箱を見つめ、左手でいまにも箱の蓋をあけようとしている。箱の蓋があいたあとには、人間にとってのあらゆる災厄が飛び出してくるのだが、パンドラにはその予感はなく、ただ好奇心から箱をあけようとしている。その無邪気な様子が伝わってくる。
これよりしばらく後に描いたパンドラは、ブルーの衣装を着て、しかも後ろ向きである。こちらは、全裸の姿をさらしており、その分、パンドラの無邪気さが強調されている。だが、パンドラの肌の色は肉感的である。
(1910年 カンバスに油彩 143.5×62.2㎝ ニューヨーク、メトロポリタン美術館)
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