モルの通夜:ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴」

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ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」第六点目は「モルの通夜(Moll's wake)」と題する。モルは二十三歳の若さで梅毒のため死んだ(棺の蓋にそう書かれている)。この絵は、棺に納められたモルを悼むために集まった人々を描いている。大部分は娼婦の仲間で、そのほか神父や葬儀屋また家主もいる。

モルは椅子の上に乗せられた棺の中に横たわり、顔は見えない。女が一人蓋を外してその顔を見ようとしているようである。その他の者はみな、真面目な様子には見えない。左手にいる神父は、コップからブランデーをこぼしながらぼけた顔つきをしているが、それは隣に座っている女のスカートの中に手を忍ばせていることと関係がある。そんな非常識な行動を、神父の背後にいる女が厳しい表情で見ている。

右手にいる葬儀屋は、葬式のことはほったらかしにして、女(娼婦)に戯れかけている。その女は左手でハンカチらしいものを持っている。どうやら葬儀屋のポケットから抜き出したものらしい。

棺の下にはモルの子供が座っている。かれには何が起きたのか理解できないだろう。かれもやがて死ぬ運命にあるようだ。壁にかかっている帽子は、第一作目でモルがかぶっていたものだ。それを見せることで、この不幸な女の一生を暗示しているのであろう。

女は騙されやすく、また人の食い物になりやすい。そんな目に合わないよう、気をつけねばならぬ、といった教訓めいたメッセージが、このシリーズからは伝わってくるのである。






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