オーストラリア映画「ピクニックatハンギング・ロック」:寄宿生失踪事件

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1975年のオーストラリア映画「ピクニックatハンギング・ロック(Picnic at Hanging Rock)」は、寄宿制女学校の生徒たちの謎の失踪事件を描いた作品。生徒たちが学校近くのハンギング・ロックという岩山にピクニックしたさいに、三人の生徒と一人の教師が謎の失踪をする。そのため、学校は無論、地元の警察や住民も大騒ぎをする。生徒のうちの一人は生きて見つかるが、他の三人はついに見つからない。一方、この学校の校長は、生徒の命より学校の経営のほうを大事に考え、貧しくて授業料を払えぬ生徒を追い出そうとする。それに絶望した生徒は自殺し、校長もまた事故死する、というような内容だ。

一応テーマは女子生徒の失踪なのだが、それに焦点が当たっているというよりは、校長の冷酷な利己主義とか、警察の無能ぶりといったことのほうが強調されている。こういうテーマは、実話を踏まえたものであればともかく、フィクションだというから、原作者が何を訴えたいと思ったのか気になるところだ。オーストラリアの寄宿舎教育の欺瞞性を暴露したかったのか、警察が無能で何の役にもたっていないことを批判したかったのか。映画の筋書き自体には何の面白みもないわけでから、いっそう原作者の意図が知りたいところである。

オーストラリアという国では、こうした失踪事件は珍しくないのだというようなメッセージが伝わってくる。国土に未開拓な部分が多く、人間をたやすく受け入れない。そんなところに無理に入っていこうとすると、痛い目にあうことになる。そういう国柄をこの映画は描写する一方で、教育者の功利主義的な利己主義は、深い文化を持たないことに根差していると言いたいかのようである。警察が無能なのも、国家の土台が不安定なせいだと言わんばかりだ。

ハンギング・ロックとは、百万年前に隆起したとされる、峻厳な岩山である。画面で見る限りそんなに広大とは思ないが、そこで人が消えると、見つけ出すことがむつかしい、ということらしい。いかにもオーストラリアの未開な自然を象徴するような眺めであり、日本では決して見られない。






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