樹木のある風景 ゲインズバラの風景画

| コメント(0)
gains02.wooded.jpg

「樹木のある風景(Wooded Landscape with a Peasant Resting)」と題されるこの絵は、トーマス・ゲインズバラの初期の風景画。彼が20歳の時の作品だ。ゲインズバラは、肖像画家としてまず名声を博したのだが、好みとしては風景画に傾いていた。だから、肖像画を描く時にも、かならず自然の風景を背景に描いた。かれは、風景の中の人間を意識的に描いた最初の画家と言える。

初期の風景画制作においては、フランドルの画家の影響を強く受けている。特にロイスダールの影響が強い。構図の取り方や色彩感覚にロイスダールの影響を指摘できる。

これはゲインズバラが生まれ育ったサフォークの風景を描いたものだ。サフォーク地方は平たんな地形ではあるが、緑豊かで独特の自然美を醸し出している。のちにコンスタブルも好んでサフォークの風景を描いたものだ。

この絵に限らないが、ゲインズバラは実際に屋外で制作せずに、アトリエで制作することが多かった。したがって目に見える自然をそのまま忠実に再現するというより、自分なりに再構成するという制作姿勢をとった。

この絵は、副題にもあるとおり、風景の中に人物を配置している。この農夫らしき人物がいるために、絵にはどこか潤いのようなものが加わる。また、前景を占めるマッシブな緑の表現は非常に多彩だ。全体として明るいイメージではないが、背景の村のあたりを明るくしていることで、画面に変化が生まれている。

(1747年 カンバスに油彩 62.5×78.1㎝ ロンドン、テート・ギャラリー)





コメントする

アーカイブ