デンマーク映画「ヒトラーの忘れもの」 地雷撤去を描く

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2015年のデンマーク映画「ヒトラーの忘れもの(UnderSandet マーチン・サンフリート監督)」は、ナチスが大戦中に設置した地雷の撤去をテーマにした作品。その撤去作業を、デンマーク当局は国内に取り残されていたドイツ兵にやらせる。映画に出てくるドイツ兵は、みな子供の兵士である。その子供たちに、デンマーク軍の下士官が地雷撤去の作業を強制する。デンマーク人にはナチスへの敵愾心があり、その敵愾心がそれらの少年兵士に向けられる。したがって彼らの課された作業には懲罰的な意味がある。国際法上は、捕虜の人権は守られることになっているが、実際には踏みにじられる。国際法よりも国家的な憎しみのほうが優先されるのである。

この映画を見ていると、敗戦国の悲哀を感じさせられる。日本も敗戦国だが、この映画の中のドイツ兵のようなひどい虐待を受けたことはないのではないか。日本が侵略したのは中国が主で、そこで一千万オーダーの人間を殺したわけであるから、中国人の憎しみを買って当然なのだが、戦後の中国は周知のような内戦状態であり、日本の戦争責任を問うような余裕をもたなかった。そのため、中国で武装解除された日本軍は、この映画の中のドイツ兵のような目に合わずに済んだ。

ナチスは、デンマーク半島の西海岸に200万個の地雷を敷設した。ほかの連合国のすべてを合したより大きな数だ。ナチスは連合国軍がデンマークの西海岸に上陸することを想定して膨大な数の地雷を敷設したとアナウンスされる。その除去に、ドイツ兵の生き残りを利用しようというわけだ。この映画では、デンマーク軍の一軍曹に14人のドイツ兵があてがわれ、その部隊で4万5千個の地雷除去がノルマとして課せられる。なにしろ少年兵のことであるから、経験が浅く、したがって巨大なリスクを要領よくコントロールできない。そのため、14人いたドイツの少年兵のうち、10人が死んでしまうのだ。

かれらの死にざまは実に無残だ。権利どころか人間としての尊厳まで蹂躙され、暴力の前に屈従させられる。その暴力は実に陰惨なものだ。なにしろ、ドイツ人に対する民族的な憎悪を背負っている。いきおい、過剰な暴力が振るわれるのである。それでも、この映画の中のデンマーク兵は、いくらかの人間性は保っていた。その人間性に促されて、かれは生き残った4人の少年兵を、ドイツに逃してやるのである。

タイトルはデンマーク語の原題では「砂の下」という意味で、要するに地雷のことだが、「ヒトラーの忘れもの」という邦題になると、置き去りにされた兵士というニュアンスも感じさせる。





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