ノルウェー映画「キッチン・ストーリー」 ノルウェー人とスウェーデン人との奇妙な関係

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2002年のノルウェー映画「キッチン・ストーリー(ベント・ハーメル監督)」は、ノルウェー人とスウェーデン人との奇妙な関係を描いた作品。スウェーデン側が、ノルウェー人を実験材料につかって商売上の研究を進めることに、材料にされたノルウェー側が複雑な反応をする。その反応ぶりを見ていると、ノルウェーにはスウェーデンへのコンプレックスがあるのではないかと感じさせられる。スウェーデンはデンマークに対しては劣等感を抱いているようなのだが、ノルウェーに対しては優越感情を持っているようである。そんなことが伝わってくる映画である。

スウェーデンの商業機関がある実験を始める。独身男性の台所における行動を研究して、商品開発に利用しようというもの。その実験の被験者には、どういうわけかノルウェー人がえばられる。スウェーデン人の実験スタッフが、ノルウェーの被験者の台所に乗り込んで、逐次被験者の行動を観察し、その記録を上部機関に送るというような設定。その実験のなかで、当然のことながら、さまざまな人間関係が生じる。その人間関係が、実験の馬鹿馬鹿しさを思い知らせる、というような内容である。

この映画では、お人好しらしいスウェーデン人の実験スタッフと、気むつかしそうなノルウェー人被験者との間に人間的なかけひきが生じる。ノルウェー人が実験の被験者に応募したのは、馬がもらえると思ったからだが、実際にもらえたのは人形の馬だった。その時点で腹をたてたが、いまさら実験を拒否することもできず、観察者を家に中に入らせる。観察者は、脚立の上に乗って、そこから見下ろすように被験者を観察するのだが、被験者は台どころではほとんど何もしない。自分の部屋に閉じこもることが多いのだ。ところが被験者は自分の部屋の底に穴をあけて、そこから観察者を逆観察していたのである。

要するに、ばかしあいのようなことをしているのだが、そのうち、互いに気持ちが打ち解けてくる。観察者は被験者との間に人間的な関係を一切結んではいけないという決まりなのだが、会話することはおろか、一緒に酒を飲む仲にまで発展する。それは職務違反なので、上に知られるとまずい。だが、観察者は、首になることよりも、被験者と人間らしく付き合うことを選ぶのである。

じつに荒唐無稽な設定で、まともに笑う気にもなれないが、ノルウェー人とスウェーデン人との複雑な関係の一端がわかるような映画である。





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