「闘牛(Suerte de Varas)」と題するこの絵は、「狂人の家」や「異端審問」などとともに同じシリーズを構成するとみられもするが、ほかの作品よりかなり後の1824年に制作されており、また、ゴヤ自身闘牛に深い関心があり、1816年には闘牛をモチーフにした版画集も制作しているので、独立した作品ととらえることもできよう。
ゴヤは若いころから闘牛に関心があったが、カルロ三世とカルロ四世の時代には、闘牛は野蛮だという理由で、禁止されていた。ナポレオン時代にはその禁止は多少は緩和されたようだが、全面的に許容されるのは、フェルナンド七世の時代である。
もっともこの作品は、ボルドーに亡命した後で制作された。かれはそこで友人のフェレルに、闘牛の版画集の出版を持ち掛けたが、フランス人は闘牛に関心がないという理由で、実現しなかった。そのかわりにゴヤは、この絵を制作してフェレルに贈った。
図柄は、闘牛場の中の様子を描いている。牛を前に大勢の人が群がり、背後には見物人がひしめいている。版画集の図柄と似ているところもある。
(1824年 カンバスに油彩 495×610㎝ ロサンゼルス、ゲッティ美術館)
コメントする