美を読む

ロバの学習:ゴヤの版画

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(弟子のほうが物知りか)

人間の愚行を動物の姿に託して描くのはゴヤの常套手段だったが、そのなかでもっとも頻繁に登場するのはロバだ。ロバは、ゴヤにとってのみならず、ヨーロッパの言説空間の中では、愚昧と無知の象徴として活躍してきたのだったが、ゴヤもまた、ロバを無知の化身として使っている。

牢獄:ゴヤの版画

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(感じやすかったがために)

ゴヤの時代のスペインは、他の西洋諸国と比べて歴史の歯車がひとサイクル遅れていたので、いろいろなタイプの人々が牢獄に入れられていた。牢獄は、犯罪者を処罰する所という側面の外に、社会の常軌から外れた連中を排除し、隔離するための場でもあったわけだ。

怠惰と貪欲:ゴヤの版画

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(これこそまさに読書だ)

小さな椅子にちょこんと腰かけた老人。背後の暗闇には二人の男がいて、一人は老人の髪を手入れし、もう一人は老人に靴を履かせている。当の老人は、組んだ膝の上に本を広げているが、それを読んでいるわけではない。居眠りをしているのだ。

異端審問:ゴヤの版画

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(あの塵埃)

ゴヤの生きていた時代には、異端審問所がまだ存在して活動していた。それは、もともと宗教裁判として始まり、異端の考えを持った者を断罪していたのだが、ゴヤに時代になると、宗教的な異端者ばかりでなく、政治的な反政府分子を弾圧する手段としても使われていた。実際多くの自由主義者たちが異端審問の対象になったのであり、ゴヤ自身にも、異端審問所から呼び出されるということがおこった。ゴヤが晩年フランスへ移住したのは、ひとつには異端審問から逃れるためだったとも言われる。

むしられる鳥たち:ゴヤの版画

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(みんなひっかかるだろう)

この奇妙な絵で、ゴヤは一体何を言いたかったのか、様々な憶測がなされてきた。図像的には、画面の下で、人間の顔をした鳥が、女たちによって羽をむしられ尻の穴に串を突っ込まれているのと、一本の枯れ木の枝の上やその周囲にいる、これもやはり人間の顔をした鳥たちが目を引く。この鳥たちは、何の隠喩をあらわしているのだろうか。

遣手婆:ゴヤの版画

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(けっこうな忠告)

版画集「きまぐれ」には、遣手婆(セレスティーナ)が多くあらわれる。遣手婆の仕事は女の売春相手を斡旋することで、決して忠告などをすることではないが、この絵の遣手婆は、題名通りだと、若い女になにかしら忠告していることになっている。

貪欲な聖職者たち:ゴヤの版画

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(かっかしている)

版画集「きまぐれ」の中でゴヤがこだわったテーマの一つに聖職者への批判がある。聖職者は、欺瞞と貪欲の権化として描かれることが多いが、なかでも修道士がその最たるものとされる。

愛と死:ゴヤの版画

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(愛と死)

この作品が何故「愛と死」と題されたのか。愛する男を失った女の悲しみを描いたのだと解釈すれば、何となくわからぬでもない。男は、恐らく決闘に敗れて死に、その遺体を女が抱きかかえている、そんなふうに見えないでもない。

女の略奪:ゴヤの版画

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(彼女は連れ去られた)

これは女の略奪を描いた作品である。真っ黒な闇を背景に、真っ黒な顔の男が女を抱きかかえているが、それはたった今略奪した女なのだ。女を略奪した顔の黒い男は、その着ているものから修道士だと推測される。とするとこの絵は、修道士が女を盗んでいるところを描いたということになる。

仮面の娘たち:ゴヤの版画

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(娘たちはハイと承諾して最初に来た男と婚約する)

ゴヤの自画像に続いて現れる版画の最初のものが「娘たちはハイと承諾して最初に来た男と婚約する」と題されたこの作品である。当時のスペインの富裕な階級に見られていた打算的な結婚を風刺したものだ。娘の結婚は、親にとっては自分の社会的な地位を高めるための手段だったが、当の娘にとっては、親の束縛から離れて、自由気ままな生き方を手にするきっかけだった。だから、「ハイと承諾して最初に来た男と婚約する」わけだ。結婚は、愛の問題ではなく、打算の問題というわけだ。

気まぐれ( Los Caprichos ):ゴヤの版画

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ゴヤの版画集「気まぐれ( Los Caprichos )」は、1799年に第一版が刊行された。総刊行点数は267セットであり、そのうち売れたのは27セットのみだという。残りは、原版ともども国王に寄贈された。異端審問所の告発を逃れるためだと言われている。こんなこともあり、この版画集は、ゴヤの生前にはほとんど注目されることはなかった。

ゴヤの版画

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ゴヤは生涯に四種類の版画集を制作した。「気まぐれ( Los Caprichos )」、「戦争の惨禍( Los Desastres de la Guerra )」、「闘牛技( Tauromaquia )」、「妄( Los Disparates )」である。このうち、生前に刊行されたのは「気まぐれ」と「闘牛技」だけであり、刊行数も少なかった。のみならず、「気まぐれ」については、内容の過激さから、権力によって弾圧される可能性を考えて、ゴヤ自身が流通を遠慮していたフシがある。ゴヤは晩年に、「気まぐれ」の原版を、王室に寄贈し、王室の権威を借りて、その抹消を逃れようと図ったくらいである。「戦争の惨禍」と「妄」は、これらを相続していた息子ハビエルの死後にやっと刊行された。

犬:ゴヤの黒い絵

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聾の家二階サロンの入口を入ってすぐ右手前の壁に描かれていたのが「犬」と題されたこの絵(134×80cm)である。この部屋を時計回りに巡回して歩くと、最後に現れる絵である。そんなこともあって、この絵にはゴヤの最後(つまり死)を思わせるようなところがある。

アスモデウス:ゴヤの黒い絵

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聾の家二階サロン入り口から見て右側の手前の壁に描かれていたのが「アスモデウス」と題されたこの絵(123×266cm)である。アスモデウスとは、旧約聖書外典「トビト書」に出てくる好色な悪魔である。サラと言う娘に横恋慕したアスモデウスは、サラの婚約者を七人も殺して、サラを我がものにしようとしたが、トビトの息子トビアスの姦計に陥れられて、エジプトの奥地に追放されたということになっている。

異端審問所の行進:ゴヤの黒い絵

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聾の家二階サロンの入り口から向かって右側の奥の壁に描かれていたのが「異端審問所の行進」と題されたこの絵(123×266cm)である。題名はゴヤ自身がつけたものではなく、ブルガーダやイリアルトによるものなので、この絵が本当に異端審問所を描いているのかはっきりはしない。現在この絵を保存しているプラド美術館は、これを「聖イシードロの泉への巡礼」としているが、聖イシードロ修道院の周辺にはこのような光景は見当たらぬことから、殆どの研究者が疑問視している。

二人の女と一人の男:ゴヤの黒い絵

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聾の家二階サロンの入口を入って正面右側の壁に描かれていたのが、「二人の女と一人の男」と題されたこの絵(125×66cm)である。現存する絵を見た限りでは伝わってこないが、この絵は実に不道徳な絵なのである。画面では、男の右手が、黒い布の下に隠れて見えないが、レントゲン写真からわかったことは、もともとこの男の手は、自分のペニスをつまんでいたのである。つまり、この絵は、マスターベーションに耽る男と、それを見てあざけりの表情をうかべる女たちを描いていたのである。

書類を読む男たち:ゴヤの黒い絵

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聾の家二階サロンの入り口向かい側の壁左手に描かれていたのが、とりあえず「書類を読む男たち」としたこの絵(126×68cm)である。ゴヤの遺産相続目録を作ったブルガーダによって「二人の男」と名づけられ、後イリアルトによって「政治家たち」と名づけなおされた。ブルガーダがなぜ「二人の男」としたかについては、わからないことが多い。というのも、この絵には六人の男が描かれているからである。イリアルトが、「政治家たち」としたことには、一定の辻褄がつけられる。

決闘:ゴヤの黒い絵

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聾の家二階サロンの入り口から向かって左手の壁の、窓を隔てた奥側に描かれていたのが「決闘」と題する長大な絵(123×266cm)である。麦畑と思われる広大な大地の上で、巨大な図体の二人の男が棍棒を振りかざしながら、殴りあっている図柄である。この男たちが巨人であることは、背景との比較から、ほぼ間違いない。

運命:ゴヤの黒い絵

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聾の家二階サロンの入り口から向かって左側手前の壁に描かれていたのが「運命」と題された絵(123×266cm)である。「運命」とは、ギリシャ神話に出てくる運命の女神モイライの三姉妹のことをさす。画面には、その三姉妹とともに正体不明の男が描かれている。男を含めた四人の人物が、夕日を反照した湖の上に浮かんでいる。なんとも不思議な雰囲気に包まれた絵だ。

スープを飲む老人:ゴヤの黒い絵

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この絵(53×85cm)は、とりあえず「スープを飲む老人」としておいたが、題名も、描かれた場所も、確定的なことがわかっていない。場所については、聾の家一回食堂の入り口の上部に描かれたという説と、二階サロンの入り口左手の壁に描かれたという説が拮抗している。ゴヤの研究で知られる堀田善衛は一階説だが、ここでは二階説を取りたい。そうしないと、二階サロンの入り口左手の壁だけが、空白になってしまうからである。

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