アルフォンス・ミュシャ(Alfons Maria Mucha 1860-1939)といえば、19世紀末にヨーロッパを席巻した芸術運動「アール・ヌーヴォー」の代表選手としての位置づけである。アール・ヌーヴォーの特徴は、過度の装飾性とマンガチックな人工美にあるといえるが、ミュシャはそれらを最も明確に体現していた。同時代の同じ傾向の画家としては、クリムトがあげられるが、ミュシャはポスターなどの商業的な分野に深くかかわったこともあって、以上の特徴が誰よりも強く表れている。
「豹に襲われる黒人(Un nègre attaqué par un léopard)」は、最晩年の異国趣味をモチーフにした一連の作品の一つ。鬱蒼としたジャングルの中で、豹に襲われる黒人を描いている。このように人間が野獣に襲われるというモチーフは、ルソーの絵としては珍しい。ルソーはこの絵の構図上のヒントを、子供向けの絵本から得たという。その絵本では、動物園の飼育員と豹がたわむれている図柄が描かれていたのだったが、ルソーはそれを、豹が黒人を襲う場面に転化させたのである。その理由ははっきりしない。
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