漢詩と中国文化

時世妝:白楽天を読む

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白楽天の「新楽府」から「其三十五 時世妝」(壺齋散人注)

  時世妝 時世妝   時世の妝 時世の妝
  出自城中傳四方  城中より出でて四方に傳はる
  時世流行無遠近  時世の流行 遠近無し
  腮不施朱面無粉  腮に朱を施さず面に粉無し
  烏膏注唇唇似泥  烏膏唇に注(つ)けて唇泥に似たり
  雙眉畫作八字低  雙眉畫きて八字の低を作す
  妍媸黑白失本態  妍媸 黑白 本態を失し
  妝成盡似含悲啼  妝成って盡く悲啼を含めるに似たり
  圓鬟無鬢堆髻樣  圓鬟(かん)鬢無く堆髻の樣
  斜紅不暈赭面狀  斜紅暈せず赭面の狀
  昔聞被髪伊川中  昔聞く 被髪伊川の中
  辛有見之知有戎  辛有之を見て戎有るを知る
  元和妝梳君記取  元和の妝梳 君記取せよ
  髻堆面赭非華風  髻堆面赭は華風に非ず

賣炭翁:白楽天を読む

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白楽天の「新楽府」から「其三十二 賣炭翁」(壺齋散人注)

  賣炭翁          炭を賣る翁
  伐薪燒炭南山中  薪を伐り炭を燒く南山の中
  滿面塵灰煙火色  滿面の塵灰煙火の色
  兩鬢蒼蒼十指黑  兩鬢蒼蒼として十指黑し
  賣炭得錢何所營  炭を賣り錢を得て何の營む所ぞ
  身上衣裳口中食  身上には衣裳口中に食
  可憐身上衣正單  憐れむべし身上の衣は正に單
  心憂炭賤願天寒  心に炭の賤しきを憂へ天の寒からんことを願ふ
  夜來城外一尺雪  夜來 城外 一尺の雪
  曉駕炭車輾氷轍  曉に炭車を駕して氷轍を輾く
  牛困人飢日已高  牛は困しみ人は飢ゑ日は已に高し
  市南門外泥中歇  市の南門の外泥中に歇(やす)む

五弦彈:白楽天を読む

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白楽天の「新楽府」から「其十七 五弦彈」(壺齋散人注)

  五弦彈 五弦彈  五弦の彈 五弦の彈
  聽者傾耳心寥寥  聽者は耳を傾け 心寥寥たり
  趙璧知君入骨愛  趙璧は知る 君が骨に入りて愛するを
  五弦一一爲君調  五弦 一一 君が爲に調す
  第一第二弦索索  第一第二の弦は索索として
  秋風拂松疏韻落  秋風 松を拂って疏韻落つ
  第三第四弦泠泠  第三第四の弦は泠泠として
  夜鶴憶子籠中鳴  夜鶴子を憶って籠中に鳴く
  第五弦聲最掩抑  第五の弦は聲最も掩抑にして
  隴水凍咽流不得  隴水凍咽して流れ得ず
  五弦並奏君試聽  五弦並び奏す 君試みに聽け
  淒淒切切複錚錚  淒淒 切切 複た錚錚
  鐵擊珊瑚一兩曲  鐵は珊瑚を擊つ一兩曲
  冰瀉玉盤千萬聲  冰は玉盤に瀉ぐ千萬聲

新豐折臂翁:白楽天を読む

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白楽天の新楽府から「其九 新豐の臂を折りし翁」(壺齋散人注)

  新豐老翁八十八  新豐の老翁八十八
  頭鬢眉須皆似雪  頭鬢眉須 皆雪に似たり
  玄孫扶向店前行  玄孫扶けて店前に向かって行く
  左臂憑肩右臂折  左臂は肩に憑り右臂は折れたり
  問翁臂折來幾年  翁に問ふ臂折れてより幾年ぞ
  兼問致折何因緣  兼ねて問ふ折るに致りしは何の因緣ぞと

胡旋女:白楽天を読む

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白楽天の「新楽府」から「其八胡旋の女」(壺齋散人注)

  胡旋女 胡旋女   胡旋の女 胡旋の女
  心應弦 手應鼓   心は弦に應じ 手は鼓に應ず
  弦鼓一聲雙袖舉  弦鼓一聲 雙袖舉がり
  回雪飄搖轉蓬舞  回雪飄搖し 轉蓬舞ふ
  左旋右轉不知疲  左に旋り右に轉じて疲れを知らず
  千匝萬周無已時  千匝 萬周 已む時無し
  人間物類無可比  人間物類 比すべき無く
  奔車輪緩旋風遲  奔車 輪緩 旋風 遲し
  曲終再拜謝天子  曲終り再拜して天子に謝す
  天子為之微啟齒  天子之が為に微かし齒を啟(ひら)く

上陽白髪人 愍怨曠也:白楽天を読む

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白楽天の新楽府より「上陽白髪の人、怨曠を愍むなり」(壺齋散人注)

  上陽人          上陽の人
  紅顏暗老白髪新  紅顏暗く老いて白髪新たなり
  綠衣監使守宮門  綠衣の監使宮門を守る
  一閉上陽多少春  一たび上陽に閉ざされてより多少の春ぞ
  玄宗末歲初選入  玄宗の末歲 初めて選ばれて入る
  入時十六今六十  入る時十六今六十
  同時採擇百余人  同時に採擇す百余人
  零落年深殘此身  零落して年深く 此の身を殘す
  憶昔吞悲別親族  憶ふ昔 悲しみを吞みて親族に別れ
  扶入車中不教哭  扶けられて車中に入るも哭せしめず
  皆云入內便承恩  皆云ふ 入內すれば便ち恩を承くと
  臉似芙蓉胸似玉  臉は芙蓉に似て胸は玉に似たり
  未容君王得見面  未だ君王の面を見るを得るを容れざるに
  已被楊妃遙側目  已に楊妃に遙かに側目せらる
  妒令潛配上陽宮  妒(ねた)みて潛かに上陽宮に配せられ
  一生遂向空房宿  一生遂に空房に宿る

新樂府 序:白楽天を読む

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「資治通鑑」元和2年11月の条に、「盩厔尉、集賢校理白居易、楽府及び詩百篇を作り、時事を規諷すること禁中に流聞す、上見て之を悦び、召して翰林に入れしめ学士となす」とある。官僚生活を始めたばかりの白楽天にとって、「時事を規諷する」詩すなわち風諭詩は、もっとも力を入れたものであった。これに比べれば「長恨歌」のようなものは、単なる筆のすさびに過ぎないと、自らに言い聞かせていたのでもあったが、世人が風諭詩より長恨歌のほうを重んじたのは、白居易にとっては皮肉なことではあった。

白楽天の生涯の友となった元稹は、様々な点で白楽天とは対照的だった。白楽天がどちらかというと慎重な性格だったのに対して、大胆で自分の身を案じないところがあり、したがって世間の不正ともひるまず戦った。そんな性格がもとで、幾度も左遷されている。その一方で独特の政治感覚を持っており、宰相にまで上り詰めた。白楽天にはとてもできないことである。

送王十八歸山寄題仙遊寺:白楽天を読む

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白楽天の長恨歌がなったきっかけは、友人たちと共に仙遊寺に遊んだことだったことは、先稿で述べたとおりだ。その時に白楽天と行動を共にした友人の一人に王質夫がいた。白楽天が都に上ったのと前後して王質夫も都に召されたと思われる。ところが何かの事情で失脚したらしく、王は都を追われて故郷へ帰ることになった。その折に白楽天が王に送った詩が「送王十八歸山寄題仙遊寺」である。かつてともに遊んだことをなつかしみ、今後そのような喜びが得られないことを嘆くとともに、故郷へ帰れる友人を羨むと言って、慰めてもいる。

長恨歌(五)白楽天を読む

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最期の段では、玄宗の使者と面会した楊貴妃が、自分の思いを切々とつづる場面が展開される。最後に有名な比翼の鳥と連理の枝の比喩を用いて、(玄宗と自分との)二人の切れぬ間を絶叫して終わる。

長恨歌(四)白楽天を読む

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この段(四)では、悲しみに沈む君王のために四川省の名高い道士が招かれ、楊貴妃の魂魄を呼び出すようにと命じられる。そこで道士は弟子の方士に命じて、天上天下至る所を探させる。すると海上の仙山に仙女たちが住んでいるという噂を聞きつけ、そこに行ってみるに、果して楊貴妃らしい仙女が住んでいることがわかった。こうして、死に別れた楊貴妃と玄宗とが、夢幻のなかで結ばれる可能性が高まるのである。

長恨歌(三)白楽天を読む

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この段(三)は、安禄山の乱が一段落して、皇帝が都へ帰るさまが描かれる。帰る途中、馬嵬にさしかかったところで、楊貴妃が空しく死んでいった悲しみにふけり、都に戻ってからも、楊貴妃のいない毎日を味気なく過ごす皇帝の気持ちが歌われる。

長恨歌(二):白楽天を読む

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第二部は、安禄山の反乱に始まり、皇帝の軍隊が蜀へと逃亡するさまを描く。その逃避行の途中、馬嵬において兵士が反乱を起こし、楊貴妃を皇帝の目の前で殺してしまう

長恨歌(一):白楽天を読む

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元和元(806)年、白楽天は元稹とともに制科に合格し、盩厔県の尉となった。盩厔県は長安の西方に位置し、かつて玄宗が安禄山を逃れて走る途中、愛する楊貴妃が殺された馬嵬が領内にあった。そんなところから白楽天は、楊貴妃の運命に関心を持ったのだと思われる。長恨歌はそんな関心から生まれた作品なのである。

贈元稹(白居易 唐詩)

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白楽天は32歳の時に試判抜萃科の試験に合格するが、その時一緒に受験したものに元稹があった。白楽天が進士合格のエリートだったのに対して、元稹は明経科の出身であったが、努力をおこたらず準備したおかげで、難しく困難な試判抜萃科に合格した。その時の成績は、白楽天が主席、元稹は第五席であった。

常樂里閑居:白楽天を読む

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白楽天は23歳の時に父を失って、苦学しながら科挙に備えたが、29歳で進士に及第、ついで32歳の時に試判抜萃科に合格した。しかして秘書省の校書郎を授けられて官僚生活を開始し、長安の常樂里に寓居を構えた。この詩は、その寓居にあって、官僚として出発したばかりの自分の生活ぶりを歌ったもの。前途洋々とした若者の、溢れるような抱負がみなぎっている。なお、この詩は数人の同僚と思われる友人に寄せられているが、その中には白楽天にとっての生涯の友となった元稹の名も含まれている。姓と名の間に挟まっている数字は、兄弟の中での出生の順番をさす。

白楽天:生涯と作品

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白楽天は中唐を代表する詩人ということになっている。中唐の時代というのは、その名のとおり盛唐と晩唐に挟まれた時代で、唐王朝が繁栄から没落へと向かう転換期に当っていた。転換期というのは、一方では体制の古い要素が乗り越えられて新しい息吹が芽生えてくる側面をもつとともに、転換ゆえの不安定さを併せ持っている。前者の要素がうまく働けば、その王朝は勢いを盛り返していっそう栄えることとなる可能性が高まるが、後者の要素が暴走すると破滅していく危険性を持ってもいる。中唐の時代はこの二つの要素が絡まり合いながら、基本的には没落に向かってゆっくりと坂を転がり落ちて行った時代だったと言えるのではないか。

闕題:秋瑾を読む

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秋瑾の七言絶句「闕題(題を欠く)」(壺齋散人注)

  黄河源溯浙江潮  黄河の源は溯る 浙江の潮
  衞我中華漢族豪  衞れ我が中華を 漢族の豪よ
  莫使滿胡留片甲  滿胡をして片甲を留めしむる莫かれ
  軒轅神冑是天驕  軒轅の神冑は是れ天驕なり

勉女權歌:秋瑾を読む

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秋瑾の歌「女權に勉むる歌」(壺齋散人注)

  吾輩愛自由      吾輩は自由を愛す
  勉勵自由一杯酒  勉勵せよ自由一杯の酒を
  男女平權天賦就  男女平權 天賦に就く
  豈甘居牛後      豈に牛後に甘居せん
  願奮然自拔      願はくは奮然として自拔し
  一洗從前羞恥垢  一洗せよ從前羞恥の垢を
  若安作同儔      若(なんじ)安じて同儔作(た)れ
  恢復江山勞素手  江山を恢復するに 素手を勞せよ

臨江仙:秋瑾を読む

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秋瑾の詞から「臨江仙」(壺齋散人注)

  把酒論文歡正好  酒を把って文を論ぜば 歡正に好し
  同心況有同情    同心 況んや同情有るをや
  陽關一曲暗飛聲  陽關 一曲 暗に聲を飛ばせば
  離愁隨馬足      離愁 馬足に隨ひ
  別恨繞江城      別恨 江城を繞る

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