映画を語る

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1927年のサイレント映画「イタリア麦の帽子(Un chapeau de paille d'Italie)」は、ルネ・クレールのサイレント映画の代表作たるのみならず、サイレント映画の傑作と言ってよい。モンタージュ手法をはじめ、映画の基礎的なテクニックをほぼ網羅しており、映画史上にも重要な位置を占める。

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1924年のフランス映画「眠るパリ(Paris qui dort)」は、巨匠ルネ・クレールの映画デビュー作である。フランスは映画先進国として世界の映画界をリードしてきたのであるが、ルネ・クレールはそんなフランス映画界の申し子よろしく、以後世界の映画に大きな影響を及ぼしていく。チャップリンの傑作「モダン・タイムズ」や「独裁者」が、クレールの「自由を我らに」や「最後の億万長者」から大きなインスピレーションを得たことはよく知られている。

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長谷川和彦の1976年の映画「青春の殺人者」は、中上健次の短編小説「蛇淫」を映画化したもの。原作は1974年に千葉県市原市で起きた親殺し事件を下敷きにしたものだが、そこには中上らしい事件の読み方が働いていたように思える。この事件は、裕福な家庭の息子が一時の激情に駆られて刹那的に両親を殺してしまったといわれるが、中上はそこに、激情の背景にあったものを見ているようなのだ。現実の犯人は、娼婦まがいの女との交際を両親に咎められてかっとなったと言われたが、この映画の中の息子はもっと鬱屈した感情をもっていたように描かれている。この映画の中の女は、母親の連れ合いの男からレープされたり、複雑な過去を背負っており、そんなこともあって、社会的に差別されているように描かれている。中上自身は、差別に対して非常に敏感なので、この小説の中の若い男女も、社会の差別意識の犠牲になったのではないかと思ったフシがある。

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小林正樹の1967年の映画「上意討ち 拝領妻始末」は、徳川時代の封建社会を生きる武士の、男の意地をテーマにした作品である。藩の不条理極まる仕打ちに怒った武士が、意地にかけて自分の誇りを守る。その結果自分自身は無論、家族にも甚大な影響が及ぶ、というような内容だ。武士の男の意地を描いていることでは、森鴎外の「阿部一族」と通じるものがある。また、小林自身、同じく武士の意地をテーマにした「切腹」を作っているので、よほど男の意地にこだわるタイプなのだろう。

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山本薩夫の1966年の映画「白い巨塔」は、山崎豊子の同名の小説を映画化したもの。週刊誌連載中から大変な評判になったもので、山本の映画化に続いて、テレビでも放送され、映画のリメークも重なった。それほど反響の大きな小説だったわけだ。この小説には、続編もあるが、山本は本編連載終了後に映画化しており、続編の内容は盛り込まれていない。

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1961年の映画「不良少年」は、羽仁進によるドキュメンタリー・タッチの作品である。不良少年たちの非行振りと、それがもとで少年院に入れられた少年たちの日常を描く。朝日という一少年に焦点をあて、かれを追う形で同時代の不良少年が抱えているさまざまな問題を浮かび上がらせようとするような演出である。

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1973年の映画「日本沈没」は、同年出版された小松左京の同名の小説を映画化した作品。近未来における日本列島の消滅をテーマとしている。荒唐無稽なフィクションと笑い飛ばすには、多少の現実味があるテーマだ。当時は、関東大震災の再来がまじめに議論されていたし、日本が災害に弱い国だという認識がいきわたっていたので、日本の消滅を描いたこの作品は、ある程度の現実感をもって受け止められた。じっさい、38年後には、東北大震災がおきたわけで、この映画が予測したようなカタストロフィが実現してしまった。

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1954年の映画「ゴジラ」は、いうまでもなく日本の怪獣映画のさきがけをなす記念すべき映画である。すさまじい人気を背景に、シリーズものとして続編が作られ続けたし、その後の日本の怪獣文化の原点となった。小生も小さな子どもの頃に、映画館の暗闇の中で、強大な怪物が暴れまわるさまに、心を躍らせたことを覚えている。

日蓮:中村登

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1979年の映画「日蓮」は、日蓮没後700周年を記念して作られた。製作者の永田雅一は、1958年にも日蓮の伝記映画「日蓮と蒙古大襲来」を製作しているから、日蓮へのこだわりはよほど強いのであろう。

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今井正の1953年の映画「にごりえ」は、樋口一葉の短編小説(十三夜、おおつごもり、にごりえ)を原作にして、オムニバス仕立てにした作品である。三篇とも、因習にとらわれた世界で生きる女を描いたものだ。もともと女の視点に寄り添うような内容の小説だが、今井はそれらを映画化するにあたって、共産主義者らしく、鋭い批判意識を盛り込んだ。きわめてメッセージ性の高い映画といえる。

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1939年の映画「土と兵隊」は、「五人の斥候兵」に続く田坂具隆の戦争映画だ。一応、戦意高揚映画という位置づけなのだと思うが、この映画を見た当時の日本人が、戦意をかき立てられたかは疑問だ。むしろ戦争の厳しさを感じたのではないか。当局としては、兵隊がこれほど苦労して戦っているのだから、銃後の国民は戦争に協力しろと言いたかったのだろうが、国民としては先の見えない戦争の行方に不安を感じたのではないか。

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1936年の映画「河内山宗俊」は、山中貞雄の現存するフィルム三本のうちの一本である。他の二本同様時代劇である。河内山宗俊とは、化政時代に実在した茶坊主で、坊主稼業の傍らゆすりたかりを働いたとされる。この男を題材にして、河竹黙阿弥が芝居を作り大当たりした。山中はその芝居を映画化したわけである。

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楊徳昌(エドワード・ヤン)の映画「ヤンヤン夏の思い出」は、2000年に台湾映画として作られたが、台湾で公開されたのは2017年のことであり、まずカンヌで公開された後、日本で一般公開されたといういわくつきの作品である。台湾での公開が遅れたのは、政治的な事情ではなく、取引上の不具合のためだったという。

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エドワード・ヤン(楊徳昌)は、侯孝賢と同年齢である。かれの1985年の映画「台北ストーリー(青梅竹馬)」は、その侯孝賢を主役にした作品。侯孝賢はこの映画の製作費用を補う為に、自分の家を抵当にいれて資金を工面したという。

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李安の2012年の映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)」は、李安がハリウッドに招かれて作った作品。2001年に出版された冒険小説「パイの物語」の映画化権を獲得したフォックスが、李安にメガホンを取らせた。だからハリウッド映画といってよい。

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李安の2007年の映画「ラスト・コーション(色、戒)」は、中国を舞台にした中国映画である。台湾人の李安についてこんなことをいうのは、かれが自分の国籍にとらわれず、外国人を主人公にした映画を多く作って来たからだ。この映画も、大陸の中国を舞台にしている点では、台湾とは異なった土地の出来事を描いているわけだ。李安は、台湾人でありながら台湾人としてのアイデンティティが希薄な監督である。その点では、台湾にこだわり続けた侯孝賢とは異なっている。

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李安の2005年の映画「ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)」は、男同士の同性愛を描いた作品。李安は台湾人だが、台湾を舞台とした映画はあまり作っておらず、外国に出かけて行って作ることが多い。この映画もアメリカで作った。舞台設定からキャストまですべての面でアメリカ映画といってよい。

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李安の2000年の映画「グリーン・デスティニー(臥虎蔵龍)」は、女剣士を主人公にしたアクション映画である。よく出来てはいるが、純粋な娯楽映画なので、あまり言うことはない。外的なことでいくつか気づいたことがあるので、それを述べる。

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李安の1995年の映画「いつか晴れた日に」は、ジェーン・オースチンの小説「分別と多感(Sense and sensibility)を映画化した作品。小説のタイトルがそのまま原題となっている。それを日本語版では「いつか晴れた日に」にしたわけだが、どういうわけかははっきりしない。

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李安が1993年に台湾・アメリカ合作映画として作った「ウェディング・バンケット(The wedding banquet)」は、アメリカを舞台にした台湾人とアメリカ人とのホモ・セクシャルをテーマにした作品。それに台湾人の親子関係をからませている。テーマは深刻だが、描き方はコメディタッチである。

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