映画を語る

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2001年のチェコ映画「ダーク・ブルー」は、ヤン・スヴェラークがイギリスを舞台にチェコ人の生き方を描いた作品。チェコ軍のパイロットだった男達が、ナチスドイツに占領されたチェコを脱出し、イギリス空軍の志願兵となって、ドイツ空軍と戦うさまを描いている。

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神代辰巳の1983年の映画「もどり川」は、大正ロマンポルノというふれこみだった。大正時代に舞台設定して、自分本位な男が女たらしを繰り返すというよな内容だ。神代らしく、濡れ場だけではなく、ストーリーでも観客を楽しませようと思ったようだが、観客としては、この映画のストーリーに興味をもてることはないのではないか。ストーリーはごく退屈である。その退屈さを絶え間なく続く濡れ場のシーンがおぎなっているというのは、ポルノ映画であるから当たり前のことだ。この映画から、濡れ場の迫力を取り除いたら、気の抜けたビールのように味気ないものになってしまうだろう。

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高橋伴明の1982年の映画「TATTOO<刺青>あり」は、1979年に起きた銀行強盗事件に取材した作品。それ以前の高橋はポルノ映画を作っていたのだが、普通の映画を作るにあたって、最初に選んだテーマが、銀行強盗に失敗して死んだあるならず者の青春だったわけである。そのならず者は、本物のやくざにはならなかったが、胸に彫った刺青を見せびらかして他人を脅迫し、それで世の中を渡るというケチな人間だった。そんな人間になぜ高橋が興味を覚えたか。それはわからない。

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神山征二郎の1983年の映画「ふるさと」は、認知症になった老人の人生最後の日々を描いた作品。それにダム建設にともなう「ふるさと」の消失をからませてある。老人にとっては文字どおり人生最後の日々であるが、かれの家族や村落の人々にとっても、ふるさとですごす人生最後の日々というわけである。

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2012年公開の映画「のぼうの城」は、秀吉の小田原攻めの一エピソードを描いた作品。秀吉は備中高松城の水攻めで名声を博したが、家臣の石田三成がその真似をしてうまくいかなかったというような内容である。犬童一心と樋口真継が共同監督して、2011年9月に公開の予定だったが、東日本大震災の影響で、2012年11月まで延期された。映画に出てくる洪水の場面が、大震災における津波を想起させて、人の感情を逆なでするおそれがあると判断したからだという。

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犬童一心の2007年の映画「眉山」は、母娘の絆を描いた作品。原作のさだまさしがウェットを売りものにする人間だから、これもウェットな作品に仕上がっている。ウェットすぎてしらけるほどである。

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犬童一心の2003年の映画「ジョゼと虎と魚たち」は、田辺聖子の同名の短編小説を映画化した作品。その小説を小生は未読だが、小川洋子が絶賛していた。「若いカップルの心のみずみずしさ、まだ稚拙だけれども一所懸命でひたむきな愛を、どうしてこんなに鮮やかに描けるのだろうかと驚きます」と書いている(心と響き合う読書案内)。そんな若いカップルの心のみずみずしさが、映画にもよく表現されていた。心温まる映画である。

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クロード・オータン=ララの1954年の映画「赤と黒(Le Rouge et le Noir)」は、スタンダールの有名な小説を映画化した作品。原作は近代小説の手本といわれるもので、小生は青年時代に読んだ。その折には、体が震えるほど感動したことを覚えている。小生にとって決定的な文学体験であった。

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1949年のフランス映画「美しく小さな浜辺(Une si jolie petite plage イヴ・アレグレ監督)」は、どうということもない、駄作といってよい映画だが、若い頃のジェラール・フィリップが出ているので、フィリップ・ファンにとっては見逃せないということだろう。

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今年(2022年)は、かつて大変人気のあったフランスの映画俳優ジェラール・フィリップの生誕100年とあって、日本でも記念上映会が催されている。小生もジェラール・フィリップのファンで、ルネ・クレールものの「夜ごとの美女」とか「悪魔の美しさ」といった映画がとりわけ気に入っていた。記念上映会でもこれらの映画が上映されているが、中には小生のまだ見ていない作品もある。そこで、気軽に入手できる範囲で、未見の映画を見る気になった次第。

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ローラン・カンテの2008年の映画「パリ20区、僕たちのクラス(Entre les murs)」は、フランスの中等教育の現場を描いた作品。公立中学校のクラス運営を巡って、教師が生徒との間で奮闘する様子が描かれている。クラスは規律に欠け、生徒は勝手なことばかりする。それに対して教師が立ち向かい、クラスの秩序を保って、生徒の学習を励まそうとするが、なかなか思うようにならない。教育とはいいながら、実情は教師と生徒との戦いである。ふつうの日本人からみれば、学級崩壊の特異な例ということになるのだろうが、フランスでは珍しいことではないらしい。

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1999年のフランス映画「クリクリのいた夏(Les Enfants du marais)」は、貧しいながら誇り高きフランス庶民のつつましい生き方を描いた作品。監督のジャン・ベッケルは、「モンパルナスの灯」などで知られるジャック・ベッケルの息子である。父親はエンタメ性の高い映画を手掛けたが、息子のほうは、ほのぼのとした人情劇が得意なようだ。

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ジャック・ベッケルの1960年の映画「穴(Le Trou)」は、刑務所からの囚人の脱獄をテーマにした作品。実際に起きた脱獄事件について、その当事者の一人が書いた文章をもとに映画化したものである。当事者の証言に基いていることもあって、かなりな迫力を感じさせる。

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ジャック・ベッケルの映画「肉体の冠(Casque d'or)」を小生が見たのはまだ若いころのことだが、そのさいには強烈な印象をもったことを覚えている。爾来小生はこの映画を、フランス映画を代表する作品の一つと思うようになった。

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ジャック・ドゥミの1970年の映画「ロバと王女(Peau d'Âne)」は、シャルル・ペローの童話「ロバの皮」をミュージカル風に仕立てた作品。ペローは、古いおとぎ話「灰かぶり姫(別名シンデレラ)」をもとに、父娘の近親婚とか金の糞をひりだすロバの話を組み合わせた。この映画はそれをミュージカルに仕立てることで、実に楽しい雰囲気を醸し出している。文句なしに楽しめる映画だ。

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1964年のフランス映画「シェルブールの雨傘(Les Parapluies de Cherbourg)」は、フランス流ミュージカル映画である。ミュージカルはイギリスが発祥で、英語圏では人気のある演劇分野だが、フランスでは盛んではなかった。そんなこともあってこのミュージカル作品には、なにかとってつけたような不自然さを感じる。それでも当時は世界的な評判となり、カンヌでグランプリをとったほどだった。それにはミシェル・ルグランの音楽が大きな役割を果たしたといえる。

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リチャード・エアの2001年の映画「アイリス(Elegy for Iris)」は、アルツハイマー病に襲われた妻と、そんな彼女を献身的に介護する夫の間の、感動的な夫婦愛を描いた作品。アルツハイマー病をはじめ認知症は、高齢化の進展もあって、いまでは誰にとっても身近な問題だ。自分自身いつ認知症にならぬとも限らぬし、また配偶者がならぬとも限らない。だからこの映画で描かれたような夫婦間の問題は、誰にとっても他人事ではない。誰もがいずれ自分自身が向き合わねばならなくなる境遇だ。

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テレンス・デイヴィスの2016年の映画「静かなる情熱 エミリー・ディキンソン」は、アメリカの偉大な女性詩人エミリー・ディシンソンの半生を描いた作品。エミリー・ディキンソンは、エドガー・ポーと並んで、アメリカが生んだ偉大な詩人ということができるが、その生涯には不明な点が多い。わかっているのは、そう長くはない人生を静かに閉じたということくらいだ。そんなエミリーの伝記的な事実を掘り起こし、彼女の人間的な面を描き出そうというのが、この映画の目的のようである。監督のテレンス・デイヴィスはイギリス人で、この映画もイギリス映画として作られたが、エミリーの生きた19世紀半ばのアメリカ北部を舞台にして、当時のアメリカ人の生き方にも気を配っている。


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ジム・ローチの2011年の映画「オレンジと太陽(Oranges and Sunshine)」は、児童移民と称される子どもの人身売買をテーマにした作品。これはイギリス政府とオーストラリア政府が結託して実施していた制度で、イギリス国内の養護施設の児童を移民としてオーストラリアに送り込んできたというものだ。多くの場合送り込まれた児童は、虐待や強制労働など、ひどい待遇を受けたと見られる。イギリスにとっては、無用者の厄介払いになるし、オーストラリアにとっては人口不足対策になるというので、両国政府にとって都合のよい制度であった。

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2011年公開のイギリス映画「おじいさんと草原の小学校(The First Grader)」は、ケニアの現代史に題材をとった作品。歴史の明るい面と暗い面とを対比させながら、ケニア現代史を複合的に捉えようとしたものだ。

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