日本の美術

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これは、雪舟の破墨山水図の中では、もっとも強い躍動感を感じさせるもの。破墨図にしては描きすぎだという指摘もあるが、構成はがっちりとしており、筆致もなめらかだ。

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破墨とは水墨画の技法で、墨を以て墨を破るといい、要するに淡彩の墨を重ねることで濃淡を演出する技法のことである。雪舟には、この技法による絵が何点か伝わっている。これはその一つ「破墨山水図」。画面上部の賛に、自分は破墨の技法を明で学んだことなどが記されている。その款記に「明応乙卯季春中澣日四明天童第一座老境七十六翁雪舟書」とあることから、明応四年(1495)、雪舟馬歯七十六の年の作品であることがわかる。

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雪舟の動物画としては、猿猴図屏風が伝わっている。これは、鷲鳥図屏風とともに六曲一双をなすもののうち左隻である。両隻とも「備陽雪舟七十二夏作之」という落款がある。その真偽については確たる結論は出ていない。

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左隻のほうは、背景に雪山を配しているが、風景としての趣は余り感じさせない。前景の事物に近接しすぎているせいだと考えられる。そのため装飾的なパターンと言ってよいほどである。

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以前取り上げた花鳥図屏風より数年後、雪舟七十歳頃の作品と考えられる。山水画としての要素が後退し、花鳥を全面に押し出した、装飾性の強い画風になっており、そこに桃山時代の装飾画へのつながりをみる見方もある。

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山水長巻冬の部分は、真っ白い雪山とその麓に展開する人里を描く。そして、横に連続的に展開すると見える画面に、針葉樹林の縦のリズムを介在させることで、時間の断絶を表現する。この林を境にして、時間の流れが変わることを示唆しているわけである。

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山水図巻の秋の部分は、西湖を上から俯瞰した景色に始まり、湖の沿岸から奥の山の中へと視線を導いてゆく、流れるような手法で描かれている。しかもそれを単に横へ連続させるだけではなく、季節の移り変わりがそれとなく感じられるようになっている。雪舟の構図に対する綿密な意図が現われているところである。

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山水長巻の特徴は、四季の季節の変化が明瞭に表現されていることだ。そしてその季節の交代が、それとわかるように描かれている。春から夏への交代は、霞のたちこめた山中の景観から、ゆったりと水をたたえた湖畔の景観への転換として示される。

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今日「山水長巻」として知られる雪舟の四季山水図巻は、何点か伝わっている雪舟の山水図巻の最高傑作であるとともに、雪舟の画業の頂点をなすものだ。縦四十センチにして十六メートルにも及ぶこの長大な図巻のうちに、雪舟は己の画法の粋を注ぐとともに、絵を通じて己の人生観のようなものを表現して見せた。あらゆる意味で、雪舟の雪舟らしさが集約された作品といえる。

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花鳥図屏風の左隻は冬景である。左側の前景に雪をかぶった梅の木を配し、遠景に白い雪山を展開させて、そこに溶け込ますようにして、白鷺と鴨を描いている。鴨は泳いでいるので、当然凍っていない水の上だ、雪山も湖沼も白く描かれている為に、その境界がはっきりしないが、そのはっきりしないところが、冬の雰囲気をよく出している。

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雪舟筆と伝えられる図屏風が二十点ほど伝わっている。そのうちの何点が真筆かどうか、確定はしていないが、趣向や筆致などから雪舟真筆の可能性が非常に高いものが何点かある。ここに紹介するのはそのひとつで、雪舟らしさが指摘されている。

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雪舟には、肖像画が四点伝わっている。いずれも大和絵風の画風に従って描かれたもので、そのうちの三点は鮮やかに彩色されている。肖像画は、鎌倉初期に写実的なすぐれた作品が生まれたあと、長く停滞気味であったが、雪舟は大和絵の画法によりながら、質の高い作品を生み出した。

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この山水図には、朝鮮人李孫及び朴衡文の賛がある。この二人は、文明十一年(1479)の朝鮮通信史の一員として来日したので、その折に賛を寄せたのだと思われる。この頃雪舟は、周防の大内氏に身を寄せていたが、朝鮮通信史の一向も、京の兵乱を避けて周防に寄り、その際に雪舟のこの絵を見て、賛を寄せたのだろう。

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「冬景山水図」は、「秋景山水図」と対をなすものであり、ともに雪舟の最高傑作に数えられる。なかでもこの「冬景山水図」は、構図と言い筆致といい、特に完成度の高い作品である。左上に「雪舟」の落款と「等楊」の押印があるが、これはもともとの形であったと思われる四幅一組の左端に配したものであろう。

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「秋景山水図」及び「冬景山水図」は、もともと四季山水図四点のうちの二点だったと考えられる。この二点は、「山水長巻」と並んで雪舟の最高傑作というに相応しい作品だ。画法的には、若年時の技法や中国からの影響を脱して、雪舟独自の境地を切り開いた記念碑的な作品と言える。

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山水図屏風の右隻は、左隻と連続しているわけではないが、図柄としては、同じような雰囲気のようなものを並べ、左右一体で調和を醸し出している。

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雪舟としてはめずらしい六曲一双の図屏風形式の山水画である。一応伝雪舟という扱いになっていて、真筆とは断定されていないが、真筆の可能性は非常に高いとされる。落款に「備陽雪舟筆」とあることから、文明六年(1474)頃の作品と思われる。この時期に雪舟は、山水小巻を描いており、筆致に共通するものがあると指摘される。両者とも、行体画だということで、全体としてやわらかい印象が特徴である。

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現在山口県立美術館が保存する雪舟の山水図巻は、毛利博物館所蔵の山水図巻が「山水長巻」と呼ばれているのに対比して「山水小巻」と呼ばれる。長巻に比べてもともと高さも幅も短かったことに加え、現存するものは、原本を二つに裁断したものの前半に過ぎないからだ。

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梁楷は、南宋の宮廷画家として活躍した人だが、宮廷の雰囲気とは正反対の、禅味を思わせる渋い絵を描いた。その渋さが日本の禅僧たちに受け、禅寺ではもてはやされたという。禅僧の端くれだった雪舟も、梁楷には親しみを感じたに違いない。

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李唐は、北宋末から南宋はじめにかけて活躍した画院画家で、南宋画の先駆者の一人として位置づけられる。雪舟は、夏珪らとならんで、李唐の画風も吸収しようとして、ここにあるような模写を行った。

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