白隠禅画のハイライトは、何と言っても達磨像だ。白隠は夥しい数の達磨像を残した。それらは、他の禅画同様、美術品として描いたのではなく、あくまでも禅画、つまり禅についての自身の境地とか、弟子や信者を導く手段として描いたものだ。偶像を通じて宗教を受容する(神を信じる)ことを禁じたキリスト教やイスラム教とは異なり、仏教には偶像崇拝禁止の強い動機はなかった。むしろ仏像などの偶像を積極的に用いて人々を強化してきた歴史が仏教にはある。禅画もそうした伝統を踏まえているわけであり、日本臨済宗中興の祖といわれる白隠も例外ではなかった。というより白隠こそ、衆生教化に果たす偶像の威力を最もよく理解していた人であった。
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