1976年のアメリカ映画「大統領の陰謀(All the President's Men)」は、ウオーターゲート事件をテーマにした作品。これは民主党の内部情報を、ニクソン大統領のスタッフが違法に盗聴した事件だ。1972年の6月に事件が発覚し、1974年の8月にニクソンが辞任するまで、アメリカを揺るがした。この不名誉な事件は「大統領の犯罪」として記憶されることになった。大統領のニクソンとしては、非常に不名誉な結果になったわけだ。ニクソン自身は決して無能な大統領ではなく、ベトナム戦争の中止、金兌換制度の廃止、中国との関係正常化など、歴史に残るような業績をあげているのだが、この事件のイメージがあまりにも悪いので、悪人にされてしまった。
リンゼイ・アンダーソンの1987年の映画「八月の鯨(The Whales of August)」は、人間の老いをテーマにした作品。老いた姉妹の生き方を通じて、人間が老いることの意味を考えさせるように作られている。その姉妹を、リリアン・ギッシュとベティ・デヴィスが演じている。リリアン・ギッシュはサイレント映画の大女優であり、この時には93歳になっていた。またベティ・デヴィスは、トーキー映画初期の大女優であり、その風貌とか演技ぶりは、小生のようなものも魅了されたものだった。この映画の時点では79歳になっていた。
1967年のアメリカ映画「招かれざる客(Guess Who's Coming to Dinner)」は、アメリカにおける白人と黒人との人種間結婚をテーマにした作品である。その頃のアメリカは、公民権運動の高まりの中にあったが、まだ白人と黒人との結婚など考えられなかった。なにしろ、ジャッキー・ロビンソンが大リーグでプレイするだけのことで国中が大騒ぎになったのは、わずか20年前の1947年のことだ。野球でさえそんな騒ぎになるのだから、黒人男が白人女性と結婚するなどありえないとされていた。つまりタブーだったわけだ。そのタブーをあざわらうかのように、この映画は黒人の男が白人女性との結婚に成功する姿を描いている。今日では、人種間結婚の問題を正面から取り上げた作品として高く評価されているが、当時の評価は賛否極端に分かれた。評価するものも、けなすものも、自身の人種的な偏見に無縁ではなかったのである。
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