エルマンノ:オルミの2014年の映画「緑はよみがえる(Torneranno i prati)」は、第一次大戦中のイタリア軍の前進基地を舞台にして、戦争の理不尽さとそれに翻弄される兵士たちの過酷な運命を描いた厭戦映画である。なぜ、第一次大戦から百年もたって、それに対する厭戦気分を映画のモチーフにしたのか。厭戦映画というなら、第二次大戦でもよかったわけだが、わざわざ百年前の戦争にこだわったのは、そこにまだ人間的なものをうかがえるからかもしれない。第二次大戦は、あまりにも非人間的であって、そこに人間を考えさせるものはないというような受け止め方がオルミにあって、第一次大戦の一齣をテーマにしたのかもしれない。
エルマンノ・オルミの2013年の映画「楽園からの旅人(Il villagio di cartone)」は、イタリアにおけるアフリカからの難民をテーマにした作品。それに教会の廃止問題をからませてある。イタリアは難民に対して厳しい姿勢をとっているらしく、フランスと比べても、町に黒人の姿をみることが少ない。黒人ばかりが難民とは限らないが、そもそもイタリアの町には観光客以外の外国人を見かけることは少ないので、やはり難民の絶対数が少ないのだと思う。その点は日本と似ている。
ピエル・パオロ・パゾリーニの1964年の映画「奇跡の丘(Il Vangelo secondo Matteo)」は、イタリア語原題にあるとおり、新約聖書「マタイによる福音書」を映画化したものである。通称マタイ伝は、新約聖書の冒頭におかれ、キリストの生涯をもっとも詳細に語っている。その内容は、日本人にもよく知られているところなので、ここでは特に触れない。ともあれこの映画は、この福音書の語るところをほぼ忠実に再現している。
ルネ・クレールは1947年に「沈黙は金」でフランス映画界に復帰して以降、「悪魔の美しさ」、「夜ごとの美女」、「夜の騎士道」という具合に一連の傑作群を作ったのだったが、「リラの門(Porte des Lilas)」(1957年)は、その最後を飾る作品である。しかし前三作と比較すると、多少劣るのは否定できない。
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