日本の政治と社会

岸田首相が、先般の尹韓国大統領の訪日をきっかけとしたシャトル外交の一環として韓国を訪れ、日韓首脳会談に臨んだ。これについては、韓国側からは、いわゆる徴用工問題についての韓国側の大幅な譲歩に、日本側が「呼応」することを期待していたらしいのだが、その期待を、岸田首相も無視できないと思ったのであろう、「自分としては心を痛めている」と言った。これに対して尹大統領も、過去の歴史問題については、それが「完全に整理されなければ、未来の協力に向けて一歩も踏み出せないとの認識からは脱却すべきだ」と述べ、歴史問題を棚上げして、日韓関係を改善すべきだという認識を示した。要するに、日韓関係の改善に向けて、双方が呼応しあったわけだ。

岩波の雑誌「世界」の最新号(2023年5月号)が「見えない貧困」と題したサブ特集を組んでいる。そこで「見えない貧困」の定義が問題となるが、これについては、宮本太郎の「分断社会の『見えない貧困』」という論文が次のように書いている。「困窮の広がりに制度も政治も反応せず、貧困が可視化されない」という事態が生じている、と。そうした可視化されない貧困を「見えない貧困」というらしい。

雑誌「世界」の最新号(2023年5月号)に、ノーベル賞を受賞したジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチへのインタビュー記事が載っている。「『人間らしさ』を諦めないために」と題されたそのインタビューの中で、アレクシェーヴィチは、今回のウクライナ戦争について、西側の「ウクライナへの武器提供は。戦争を止めるためには止むをえないと思う」と言い、ウクライナの徹底抗戦とそれへの西側の武器提供を擁護している。そこには、彼女の半分ウクライナ人としての民族感情が働いていると思うのだが、それとは別に、彼女が原発について語っていることが、小生には余程理性的なように見えた。彼女は、「原発は潜在的な核爆弾なのです」といって、人類が核の脅威から抜け出すためには、原発も廃止しなければならない、と主張しているのである。その主張に小生は理性的に考えられた道筋を見るのである。

岩波の雑誌「世界」最新号(2023年5月号)が、「新しい戦前と憲法」と題した特集を組んでいる。「新しい戦前」という言葉は、タレントのタモリが言い出したものだ。あるテレビ番組の中で、黒柳徹子女史から今の日本についての印象を聞かれ、この言葉を口に出したのであった。いわゆる安保三文書の改訂や、敵基地攻撃能力の保持など、官民あげて好戦的な雰囲気が充満しているいまの日本を、戦争に向かって突き進んでいった時代に重ね合わせて、こんな言葉が出たのだろうと思う。

昨日(4月13日)、北朝鮮がICBMと見られるミサイルを発射したことに伴い、日本政府はJアラートを発し、特に北海道の人びと対象に、避難するように呼びかけた。北海道の地上に落下する可能性があるとの理由からだ。結局、そのミサイルは日本に落下することはなかった。そのことで、政府の(Jアラート発出の)措置を批判する動きはないようだ。たしかに、少しでも可能性がある場合には、国民に向かって危険性を知らせることには相応の理由があると思う。だが問題はある。政府が避難するよう呼びかけても、一部の人たちを除いては、そもそも非難できるが場所がないというのが、厳然たる事実である。

雑誌「世界」の最新号(2023年5月号)に、「日韓逆転のなかの徴用工問題"解決策"」というインタビュー記事が載っているのを、興味深く読んだ。青木理が李鍾元(朝鮮半島研究者)にインタビューしたもので、今般の徴用工問題の「解決策」をテーマにしたものだ。その中で李は、韓国側からの「呼応」の呼びかけに日本側が一切応えなかったことを評して「日本の韓国化」と言っている。小生は先日アメリカ政治の韓国化について論評したことがあったが、日本もまた、第三者の視点からは、韓国化していると見られて不思議ではない。

片山善博氏は旧自治省出身で、鳥取県知事や総務大臣を歴任した人であり、その経験をいかして、日本の現状について積極的に発言している。小生は、地方公共団体の一役人として生涯の大半を過ごしたこともあり、氏の発言にはかねがね関心を持って接してきた。氏が雑誌「世界」に寄稿している「日本を診る」シリーズは欠かさずに読んでいる。そのシリーズの最新版には、「高市大臣が『捏造』だとした総務省文書から見えてくること」と題した一文を寄せていて、興味深い内容となっている。

先日小生は、岸田政権の少子化対策財源への年金の流用を批判し、受給者のみならずすべての国民が、抵抗すべきだと呼びかけたところだが、この呼びかけはどうやら、具体的な反響を呼びそうもない。国民は唯々諾々として岸田政権の言うことに従うつもりのように見える。これは、フランスに比較して非常に情けないことだ。フランスでは、マクロン政権による年金受給開始年齢の引き上げに抗議して、百万単位の大規模な抗議デモが起っているというのに、日本では諦めムードが漂っているようだ。

放送法文書問題で高市大臣を攻撃したことで名をあげた立憲民主党の小西議員が、今度は衆議院憲法審査会のメンバーを「サル」呼ばわりしたことで、大きな騒ぎを引き起こしている。中には所属する立憲民主党に対して厳正な処分を要求する政党もあるが、それは自分の無力を棚にあげた行為に見える。それはともかく、サルと呼ばれて激高するのは、自分はヒトであってサルではなく、ヒトはサルよい上等なのだから、その上等なヒトである自分が、下等なサルと一緒くたにされるのは我慢がならないということらしい。

いわゆる「放送法文書」をめぐる騒ぎは、予算委員会の質疑が事実上終わったことで、なんとなくうやむやになってしまった。それには、この問題を取り上げて追及した野党の議員が、自身別のスキャンダルを巻き起こしたということもあるが、何といっても、追求の対象となった高市元総務大臣の粘り腰が功を奏したということだろう。彼女は、常識ではとても通らないことを、通してしまったのであり、まさに常識破りの立派な人物といわねばならない。

岸田政権が、財源の見通しのないまま打ち上げた少子化対策について、その財源として年金を流用しようとしているらしい。もし本当なら、年金受給者はじめ関係する国民は、声を上げて抵抗したほうがよい。岸田政権は、少子化対策は待ったなしだから、国民があげて協力するべきだとして、年金を流用したいといっているようだが、それは筋違いである。社会保険制度には、それなりの根拠がある。その根拠のうちには、国の政策に協力して、年金の一部をさしあげてよいということは含まれていない。だから、年金を少子化対策に流用するのは、制度の趣旨に反することであって、国による年金受給者からの窃盗行為というべきである。

林外務大臣が中国へ出かけて行って、秦剛中国外相との間の会談に臨んだ。これは一応、岸田首相と習近平との間の日中関係正常化の合意を踏まえたものとされているが、先日起きた中国当局による日本人ビジネスマンの拘束が背景にある。日本政府は、この問題が深刻化しないうちに、中国側に働きかけ、なんとか開放されるように働きかける意図があったものと考えられる。だが、日本側の意図は、簡単に実現する見込みはないようだ。新聞の伝えるところによると、議論は平行線をただよい、まともな合意は何もなされなかったようである。

東芝が、好意的な相手に事実上身売りして、上場もやめることにしたそうだ。その理由は、いわゆる物言う株主の介入を排除して、自律的な企業運営をしたいということらしい。企業は株主だけのためにあるのではなく、多くの社会的な責任を負っている。その責任を果たすためにも、「物言う株主」の強欲な要求は排除せねばならぬということのようである。そういえば体裁はいいが、実態はそんなものではないだろう。

岸田首相がウクライナを訪問し、対ロ戦争に関してウクライナを支援する意向を示した。これはウクライナを利用した西側の対ロ代理戦争に日本も参戦するということを、事実上意味する。これは日本にとってよいことなのか、あるいは都合の悪いことなのか、判断が分かれるところだろう。

大相撲の春場所が興行中だが、貴景勝が休場したことで、横綱・大関がひとりもいなくなった。こんな事態は、昭和以降初めてのことだそうだ。異常というほかはないが、それ以上に、横綱・大関不在では、全く盛り上がらないというべきだ。大相撲ファンは、残念を通り越して、あきれ返っていることだろう。

東京の明治神宮再開発に伴い、大量の樹木が伐採されることがわかって、大騒ぎになっている。この地域は、東京の中でも景観のすぐれたところで、都心のオアシスとして、都民はもとより東京を訪れる人々に親しまれてきた。それを一気に伐採して、高層ビルをたてようというのだから、人々が反発するのは無理もない。たとえていえば、パリのエッフェル塔をぶっ壊して、安っぽい高層ビルを建てるようなものだ。

六年ぶりのWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が盛り上がっている。一次リーグの会場の一つが日本の東京ドームだったこと、そして日本チームが非常な活躍を見せていることが、その要因だ。小生もまた、その熱気に促されるようにして、準々決勝の対イタリア戦を、テレビ中継で見た次第だ。ご案内のように、日本チームは圧倒的な強さを見せてくれ、また、大谷やダルビッシュ、そして他の選手のすばらしいプレーを堪能することができた。

奄美大島から与那国島にかけての南西諸島に、長距離ミサイル拠点が整備され、対中戦争に備えて軍事力の強化が進められている。この島々は、中国が独自に設けている防衛線上に位置しているが、日米同盟にとっては中国攻撃の重要拠点となるものだ。日本はいままで空母を持たなかったが、これら島々が空母と同様の機能を果たせることとなる。しかも沈まない空母、不沈空母だ。

小泉純一郎元首相は、福島原発事故以来原発ゼロを叫んできたが、最近はその声が途絶えがちのように見えた。ところがこのたび、岸田政権が原発回帰の姿勢を露骨に示したことに反応して、雑誌「世界」のインタビューに応じた。「世界」はずっと一貫して原発に批判的なスタンスをとってきたので、岸田政権の原発回帰に危機感を覚え、小泉純一郎と助っ人と頼んで、引っ張り出したのだろう。

雑誌「世界」の最新号(2023年4月号)に、「またも提案?入管法改定」と題した座談会の筆記が掲載されている。今国会に提出された入管法改定案をめぐるものである。イラストレーターの金井真紀、弁護士の児玉晃一、作家の木村友祐が参加している。いづれも何らかの形で難民問題と入管行政にかかわっているということらしい。この三人の口火を切って金井が、「二年前の2021年、多くの市民やメディアが抗議してようやく廃案になったのに、何食わぬ顔をして同じ改定案をまた出してくるとは、ふざけるなという感じですね」と言っている。

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