雑誌「世界」の最新号(2021年11月号)は、入管問題をサブ特集として取り上げている。先日名古屋の入管施設で、入所者のスリランカ人女性が死んだことがきっかけで、入管問題が世間の関心を呼んだことを踏まえたものだろう。その女性の死をめぐる事実関係の検証を中心に、日本の入管行政の遅れた体質を批判的に検討している文章が寄せられている。
日本の政治と社会
雑誌「世界」の最新号(2021年11月号)に、「金学順さんが伝えたかったこと」と題する小文が寄せられている。筆者は元朝日記者の植村隆。従軍慰安婦問題を追及したことで知られる。そのかれが、最初に元従軍慰安婦金学順さんの体験を記事にしてから23年後に激しいバッシングにあった。バッシングの主体や内容については広く知られているところだと思うのでここでは触れないが、この文章を読んで、オヤと思ったのは、朝日をはじめ日本のメディアが、不当なバッシングからかれを守ってくれなかったということだ。かれは、自分自身が誹謗中傷や脅迫を受けたのみならず、娘まで恐怖にさらされたという。
横綱白鵬が引退した。先場所45回目の優勝を果たし、今場所は部屋のコロナ騒ぎで休場していた。だから負けが込んで、追い詰められて引退ということではなく、膝のけがはかなり深刻だったようだが、いちおう余力を残したうえでの引退だった。そういう点では、潔いといえる。
若年層を中心にテレビ離れが進んでいるそうだ。NHK放送文化研究所の最新(2020年)の調査によれば、平日に15分以上テレビを見た人は、10~15歳で56パーセント、16~19歳で47パーセント、20代で51パーセントという。この数字からは、若い世代の半数がテレビを見る習慣をもたないことが読み取れる。小生の感覚では、一日に15分ぐらいでは、テレビを見たことにはならないと思うので、若者のテレビ離れはこの数字が示す以上に深刻といえそうである。
「国民は、自宅で見殺しにされようとしている」と大書した二面打ち抜きの新聞広告を、出版社の宝島社が、読売、朝日、日経の三紙に掲載した。画面右上には「緊急事態」とあり、薄汚れたぬいぐるみのクマが仰向けに転がったそばに、コロナウィルスと思われる不気味な物質が忍び寄っている。
自民党の総裁選挙が告示された。四人の候補者が出揃って、マスメディアをはじめ日本中が大騒ぎになっている。この騒ぎが絶大な演出効果を発揮して、国民の関心は自民党に集中している感があり、そのことで野党の諸君はすっかり埋没するありさまである。一時は菅不人気で大ピンチに陥った自民党が、みごとに国民の注目の的となった。さすがに伝統ある自民党だ。
雑誌「中央公論」の最新号(2021年10月号)が、「台湾有事と中国包囲網」と銘打って中国脅威論をあおる文章を掲載している。その中に現職防衛大臣岸信夫へのインタビューがある。それを読むと、中国の脅威は日中戦争の一歩手前まで来ているというような錯覚をもたされる。その責任はひとえに中国側にあり、日本はそんな中国との全面対決に向けて、オールジャパンで、つまり国をあげて備える必要があるといった差し迫った焦燥感が伝わってくる。
東京五輪の総コストは当初の見込み七千数百億円を大きく上回り、三兆円を超える巨額な規模になりそうだ。一方無観客試合になったことなどもあって、収入は見込みを下回り、巨額の赤字を記録しそうだ。その負担をめぐって、国、都、大会組織委員会との間でさや当てが始まっているそうだ。都は、新型コロナ対策などで財政は火の車、という理由で、国に負担を求めているそうだが、これは都が負担するのが筋だろう。
菅首相が昨夜のコロナ延長についての記者会見に臨み、自身の進退問題に触れたうえで、自分なりに功績を誇って見せ、「未来へ道筋を示せた」と胸を張った。だが、首相のその言葉を素直に受け止める人はいないだろう。ほとんどの人は菅首相を、憲政史上最も無能な首相であり、かれのやったことは、コロナを放置して国民の命を危険にさらしたことだと思っているに違いない。そのかれが首相の座を降りると公言したいまでは、もはや死に体同然であり、いわゆるレームダックの状態に陥っていると誰もが思っているはずだ。
雑誌「世界」の最新号(2021年10月号)に、ジーナリスト西山太吉の「『NHK』に問う」という小文が載っていたのを興味深く読んだ。これはNHKが「渡辺恒雄独占告白」と銘打って、最近二度にわたって放送した番組を批判したものだ。渡辺恒雄は「ナベツネ」の略称で知られ、日本のメディア界に巨大な影響力をもつ。その限りで、NHKが特集番組を組むのはおかしなことではないが、それにしても、合わせて四時間に及ぶ放送内容は、ナベツネ個人崇拝といってもよいもので、公共放送をうたっているNHKとしては、きわめて異例だというのが西山の批評の眼目だ。
先日、自衛隊によるアフガン在留日本人とアフガン人協力者の救出について、たった一人の日本人しか救出できなかったことをめぐって、小生は「自衛隊は子供の使いか」と言って、日本の対応のお粗末さを批判したところだ。その後、詳細が明らかになるにつれて、この思いは一段と強まった。
菅首相が突然総裁選への不出馬を表明したことで、世間は大騒ぎになっている。なにしろ異様な権力欲で知られる菅首相が、自分から政権からの退場を表明したとあって、背景や直接の理由について、ゴシップ屋どもがあれこれ推測しているが、ここではそれについて立ち入ることは差し控えたい。とりあえず、菅政権によって深刻な命の危険にさらされていた日本国民にとって、当面の恐怖から解放されるメドがたったことを喜びたい。
バイデンのばかげたアフガン対策のあおりをくって、アフガン国内に取り残された人々の救出が国際的な課題となっている。各国とも、自国民のほかアフガン人協力者をアフガンから退避させる取り組みをしている。日本も自衛隊を緊急派遣して、邦人及びアフガン人協力者を退避させるミッションを与えたが、自衛隊が退避させることに成功したのは、たった一人の日本人だけだ。菅政権は、たとえ一人といえども、救出したのは成果だと強弁しているようだが、たった一人では、数百人いると言われる退避対象者にくらべ、全く仕事ができていないのと同様だ。自衛隊はいったい何をしていたのか。これでは子供の使いと言われても返す言葉がないだろう。
かつてマルクスは「ヨーロッパを妖怪が徘徊している」と語ったが、今の日本を徘徊しているのはボケ老人たちである。このボケ老人たちは、ただに日本を徘徊するだけでなく、日本を牛耳っている。ボケ老人が日本を牛耳るとどういうことになるか。
小生は先日、深刻化するコロナ禍のなかで「命を守る行動はただひとつ、菅政権を退場させること」と主張したところだが、その菅政権が相変わらず居座っている間に、事態はますます深刻化し、パニックの状況を呈している。専門家たちはこの状況を医療崩壊と認め、もはや制御不能であって、公的にできることには期待せず、国民一人一人が「自分で身を守る段階」だと結論付けた。要するに今の政権には打つ手がないということらしい。
コロナ禍がいよいよ末期的な現象を呈し、ついに医療崩壊が目前にせまっている。所によってはすでに医療崩壊が起り、まともな医療を受けられないで、自宅で死ぬ人が出ている。そういう状況を前にして菅首相は、中等程度の症状の患者には自宅療養を求めるという声明を出した。自宅療養というと聞こえはいいが、要するに入院を断られるということだ。それは患者に対して死ねと言うに等しい。
西村大臣が、政府のコロナ対策に非協力的な飲食店に対して酒類の販売をやめるよう酒販売業界に指示したところ、販売協会は大いに反発し、その撤回を求めた。その勢いがあまりにも強烈だったので、さすがの西村大臣も撤回に追い込まれた。それと並行して西村大臣は、銀行業界に対しても同趣旨の指示を出したが、これも大きな反発に直面して撤回を迫られた。
安倍晋三元総理が、五輪開催へのさまざまな批判にいらだつあまり、「反日的な人が五輪開催に強く反対している」と言って、五輪開催への批判者を反日分子であるかのように攻撃したと伝えられた。これについては、日頃の安倍晋三の本音がそのまま出たものであり、多くの人々が早速その出鱈目ぶりを非難しているので、小生がそれ以上言うこともないのだが、ただ、こうした安倍晋三の態度に、「我はすなわち国家なり」といった幼稚な尊大さを改めて感じたので、一言しておきたい気分になった。
五輪期間中に終電の時間を遅らせるとJRが発表した。お客様には時間を気にせず深夜まで五輪を楽しみ、安心してどんちゃん騒ぎをしてくださいと言っているようなものだ。JRは一民間会社であり、国民の命を守ることより、自分の利益を優先するのはIOCと同じで、別に不自然ではない。国民の命を守るのは政府の責任だ。その政府が、五輪最優先モードになっているから、JRの今回のこの方針は政府の意向に従ったものともいえる。だからJRだけを非難するいわれはないと言ってよい。
菅内閣が、イギリスのアストラゼネカ社から購入したコロナワクチンを、先般の台湾に続きインドネシアに供与するそうだ。このワクチンは、折角確保したものの、色々な事情で使われずにいたものだ。理由は大きく分けて二つある。一つは副反応が強いこと、もう一つは効果が限定的なことだ。じっさいイギリスでは、このワクチンを国民に打ったところ、初期のタイプのものには威力を発揮したが、新たな変異株には十分対応できていない。その結果イギリスが目下インド型の変移ウィルスに見舞われて、ロックダウンを余儀なくされていることは周知のことだ。
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