日本の政治と社会

中央公論2019年6月号に、歴史学者呉座勇一が「俗流歴史本と対峙する」という文章を寄せている。いま世間で評判になっている歴史書三点をとりあげて、その学問的いい加減さを指摘しながら、こうしたいい加減さがまかり通っているのは、歴史学者たちが無関心なせいともいえるので、歴史学者はもう少し目を見張って、こうしたいい加減な言説に必要な批判を与える必要があると訴えているものだ。

安倍晋三がトランプの特使としてイランを訪れたことは、昨日のこのブログでも紹介したとおりだが、その訪問の最中に、こともあろうか日本の貨物船が、ホルムズ海峡において二度にわたり砲撃を受けるという事態が起きた。この攻撃はイランに責任があるとアメリカのポンペオ国務長官は言っているから、おそらくそうなのであろう。もしそうだとしたら、イランはどんな意図に基づいてこの攻撃を行ったのだろう。日本のメディアは例によって、自分たちの想像を超える事態にアタフタしているかのように、いまのところ報道・解説を自制している。

日本の総理大臣である安倍晋三が、わざわざイランまで出かけていって、ホメイニやロウハニなどイラン側の指導者たちと一連の会談を行っているそうだ。これは、安倍晋三の自発的な意思からしたことではなく、アメリカの大統領であるドナルド・トランプに急き立てられてしたのだというふうに伝わって来る。安倍晋三自身も、そうした観測を否定していないから、事実としてそうなのだろう。だからこれは、日本の総理大臣が、外国の政府のために特使をつとめているのだといえよう。

先日のこのブログで、中国における信用スコアの動きを紹介した際に、今は民間のサービスにとどまっているが、将来はそれが政府によって運営される可能性がないわけではなく、そうなった場合には、ディストピアとしての監視国家が生まれる可能性もあると書いた。その時点では、そうなるにしてもかなり先の話だと思っていたのだが、実際はすぐ手前まで来ているということらしい。その動きを、雑誌世界最新号(2019年6月号)の記事「"C"の誘惑」が分析している。

かつて漢字が読めないことを、空気が読めないこととか解散のタイミングが読めないこととからめて、3Kが読めないと揶揄された総理大臣がいたが、空気や解散風はともかくとして、漢字が読めない総理大臣がもう一人いた。その総理大臣、ここでは某総理といっておくが、その某総理が、先日行われた前天皇の退位礼正殿の義の晴れ舞台で、国民を代表して、「天皇皇后両陛下には末永くお健やかであらせられます事を・・・願っていません」と言ったそうだ。これは「已(や)みません」というべきところを、「已」という漢字の読み方がわからずに、「いません」と読んだようだ。その場面を、小生もテレビで見ていたが、当該の場面における某総理の態度には、どこか不自然な所が感じられた。おそらく漢字の読み方がわからなくて、ちょっとしたパニックに陥ったのかもしれない。

今年の統一地方選は、あいかわらず低投票率が目立った。前半の十一道府県知事選こそ47.72パーセントで、前回をかろうじて上まわったが、それでも五割に満たない。そのほかの、道府県義選や市長選、市議選の多くは過去最低だ。これには色々な要因があるだろうが、有権者にとって地方選が活力を感じさせないことが大きく影響しているのではないかとの指摘がある。

新しい元号令和が、時の総理大臣安倍晋三のイニシャティヴで作られたことは、いまや公然の事実だ。元号案の候補収集過程から決定に至るまで安倍晋三の強い意向が反映しているので、安倍晋三は令和という元号の生みの親のように、多くの国民から見なされている。元号は、時の天皇のおくり名となるものだから、その元号の生みの親ということは、天皇の名付け親というに等しい。だから安倍晋三は天皇の名付け親になれるか、という問題設定は正確ではない。ことの性質を踏まえれば、安倍晋三は天皇の名付け親にふさわしくなれるか、といったほうがよいだろう。

旧優生保護法にもとづいて障害のある人たちに強制的な不妊手術が行われてきた問題で、被害者の救済を目的とした議員立法が成立した。その法律の前文には、「我々」を主語とした反省の言葉が書かれている。そのことについて、被害者やかれらを応援する人の中から、「我々」とは誰をさすのかという疑問の声が起っているという。かれらの考えでは、この問題の本当の責任者は、優生保護法を制定した国であり、また被害者の苦痛を放置してきたのも国であるからして、反省と謝罪の主体は国であるべきだ。したがって「我々」などと曖昧な書き方をするのではなく、国と明記したうえで、国を主語として謝罪と反省の言葉を述べるべきだということになるようだ。

最近、リベラルな編集方針で知られていた Japan Times に異変が起きたようだ。これまで「forced laborers」と表記してきた徴用工を「wartime laborers」と変更し、従軍慰安婦を「women who worked in wartime brothels, including those who did so against their will, to provide sex to Japanese soldiers」に変更したことに、異変の兆候が窺われる。

ジャーナリストの田原総一郎が、体験的戦後メディア史と題して、戦後政治家とのインタビューのやりとりを、雑誌「世界」に寄稿している。田原は、歴代の総理大臣にインタビューをしたが、ほとんどの総理大臣経験者が、戦争をするのはよくないと言っていたそうだ。田中角栄がそうだったし、宮澤喜一や竹下登もそうだった。また中曽根康弘や佐藤栄作も、戦争をできるように憲法を改正しようとはしなかった。

公立福生病院で、人工透析患者に対して、医師が人口透析にかかる医療方針の相談のなかで、透析中止の選択肢を示し、それに応じた患者が一週間後に死亡したということが明らかになった。この患者は、透析中止についての合意を文書の形に示しており、一応患者の意思を尊重してのことだったと病院側では主張しているが、その患者は、死ぬ直前に透析をまた受けたいとも言っていたらしく、果たして病院側の対応に問題がなかったのかどうか、疑問を呼んでいる。その疑問に応える形で、東京都が調査に入ったほか、透析学会も立ち入り調査をする意思を表明している。

日産元会長カルロス・ゴーンが、逮捕されて以来108日ぶりに保釈された。これは日本の刑事司法の歴史上きわめて異例のことだ。日本の刑事司法では、逮捕された場合には、自分の犯罪を自白しない限り、保釈してもらえないと言う「伝統」があった。それが国の内外で「人質司法」と批判されてきたわけだが、その強固な伝統が崩されたわけだ。これをどう受け取るかは、人それぞれだろうが、筆者は日本の刑事司法のあり方にとって、非常にいいことだと思っている。

いわゆる統計不正問題をめぐって、ひと騒ぎになっている。国会でも取り上げられ、質疑がなされているが、テレビでそのありさまを見ていると、あきれて苦笑する気にもなれない。政府の役人が、野党議員の質問に答えて、珍妙な答弁をしているからだが、その答弁というのが、隠蔽という言葉をめぐって、その常識上の意味とは別に、自分たちが定義した意味もあると、公然と言い放ったものだったのである。

先日安倍晋三総理がある集会で、民主党政権の時代を悪夢と表現したことで批判を浴びた。それに対して安倍総理は、自分にも言論の自由があると答えた。かれにも言論の自由があるのは当然のことだが、その自由を行使したことで批判を浴びたのはどういうわけか。

ゴーン事件をめぐっては、日本の刑事司法手続きに対する海外からの批判は見られるが、こと日本国内に関して言えば、メディアはゴーンの有罪を当然の前提とした書き方をしているし、一般国民も、ゴーンは当然罰せられると思い込んでいるようである。それにはどうも理屈を超えたところがあるように見受けられるので、小生などは不気味な思いをさせられるところなのだが、なかにはこの事態の日本的な特殊性を指摘し、日本の検察には、この裁判で負ける可能性があると考えているものもいるようだ。

安部晋三総理がモスクワまで出向いて行って、プーチンと直談判した。これに先立って安倍総理は、この会談で北方領土問題を解決し、日ロ平和条約の締結に向けた動きを加速させると国民に言っていたので、小生などもその成り行きに大いに注目していたのだったが、結果的には何事も起こらなかった。安倍総理の国民向けのメッセージは、空手形に終わった形だ。小生はそれでよかったと思っている。

ゴーン事件をめぐっては、ゴーンの罪状が次々と明らかにされるにつれて、ゴーン本人の強欲さもさることながら、そうした強欲さが現代の資本主義に内在している動きに根差したものだとの感を強く抱かされる。人間の欲望にはキリがないものだが、その欲望を極端なまでに先鋭化させる勢いが現代の資本主義にはあるということだろう。

無覚先生:どうも、あけましておめでとうございます。わたしの年になると、ひとつづつ年を重ねるのがほんとうにめでたいことのように思えるんです。これから先、自分にいかほどの時が残されているのか、心もとない感覚があって、時間の濃度が段々と薄くなってゆくとはいえ、やはりすこしでも長く生き永らえることに、大きな意義を感じるものです。

昨夜(2018年11月18日)放送のNHKスペシャルが、「人生100年時代を生きる」と題して、死に方の選択について考えさせる番組を流していた。それを見た筆者は、一方では自分のこととして受け止めるとともに、他方では、いつまでも人に迷惑をかけているよりも、すみやかに死んだ方がいいですよと、他人からせかされているようにも感じた。

ジャーナリストの斎藤貴男が雑誌「世界」2018年12月号に寄せた小文「体験的『新潮45』論」のなかで、最近の日本における保守論壇の劣化を嘆いている。斎藤によれば、保守論壇の劣化は、小泉政権の頃から始まったのだそうだ。この頃から、保守論壇は権力にこびるようになり、"保守政権に無条件で服従しない奴はみんな敵だ、サヨクだ"と叫んで、ネトウヨ化してきたということらしい。今回起きた「新潮45」の廃刊事件は、そうした保守論壇の劣化を象徴するもののようだ。

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