日本の政治と社会

公立福生病院で、人工透析患者に対して、医師が人口透析にかかる医療方針の相談のなかで、透析中止の選択肢を示し、それに応じた患者が一週間後に死亡したということが明らかになった。この患者は、透析中止についての合意を文書の形に示しており、一応患者の意思を尊重してのことだったと病院側では主張しているが、その患者は、死ぬ直前に透析をまた受けたいとも言っていたらしく、果たして病院側の対応に問題がなかったのかどうか、疑問を呼んでいる。その疑問に応える形で、東京都が調査に入ったほか、透析学会も立ち入り調査をする意思を表明している。

日産元会長カルロス・ゴーンが、逮捕されて以来108日ぶりに保釈された。これは日本の刑事司法の歴史上きわめて異例のことだ。日本の刑事司法では、逮捕された場合には、自分の犯罪を自白しない限り、保釈してもらえないと言う「伝統」があった。それが国の内外で「人質司法」と批判されてきたわけだが、その強固な伝統が崩されたわけだ。これをどう受け取るかは、人それぞれだろうが、筆者は日本の刑事司法のあり方にとって、非常にいいことだと思っている。

いわゆる統計不正問題をめぐって、ひと騒ぎになっている。国会でも取り上げられ、質疑がなされているが、テレビでそのありさまを見ていると、あきれて苦笑する気にもなれない。政府の役人が、野党議員の質問に答えて、珍妙な答弁をしているからだが、その答弁というのが、隠蔽という言葉をめぐって、その常識上の意味とは別に、自分たちが定義した意味もあると、公然と言い放ったものだったのである。

先日安倍晋三総理がある集会で、民主党政権の時代を悪夢と表現したことで批判を浴びた。それに対して安倍総理は、自分にも言論の自由があると答えた。かれにも言論の自由があるのは当然のことだが、その自由を行使したことで批判を浴びたのはどういうわけか。

ゴーン事件をめぐっては、日本の刑事司法手続きに対する海外からの批判は見られるが、こと日本国内に関して言えば、メディアはゴーンの有罪を当然の前提とした書き方をしているし、一般国民も、ゴーンは当然罰せられると思い込んでいるようである。それにはどうも理屈を超えたところがあるように見受けられるので、小生などは不気味な思いをさせられるところなのだが、なかにはこの事態の日本的な特殊性を指摘し、日本の検察には、この裁判で負ける可能性があると考えているものもいるようだ。

安部晋三総理がモスクワまで出向いて行って、プーチンと直談判した。これに先立って安倍総理は、この会談で北方領土問題を解決し、日ロ平和条約の締結に向けた動きを加速させると国民に言っていたので、小生などもその成り行きに大いに注目していたのだったが、結果的には何事も起こらなかった。安倍総理の国民向けのメッセージは、空手形に終わった形だ。小生はそれでよかったと思っている。

ゴーン事件をめぐっては、ゴーンの罪状が次々と明らかにされるにつれて、ゴーン本人の強欲さもさることながら、そうした強欲さが現代の資本主義に内在している動きに根差したものだとの感を強く抱かされる。人間の欲望にはキリがないものだが、その欲望を極端なまでに先鋭化させる勢いが現代の資本主義にはあるということだろう。

無覚先生:どうも、あけましておめでとうございます。わたしの年になると、ひとつづつ年を重ねるのがほんとうにめでたいことのように思えるんです。これから先、自分にいかほどの時が残されているのか、心もとない感覚があって、時間の濃度が段々と薄くなってゆくとはいえ、やはりすこしでも長く生き永らえることに、大きな意義を感じるものです。

昨夜(2018年11月18日)放送のNHKスペシャルが、「人生100年時代を生きる」と題して、死に方の選択について考えさせる番組を流していた。それを見た筆者は、一方では自分のこととして受け止めるとともに、他方では、いつまでも人に迷惑をかけているよりも、すみやかに死んだ方がいいですよと、他人からせかされているようにも感じた。

ジャーナリストの斎藤貴男が雑誌「世界」2018年12月号に寄せた小文「体験的『新潮45』論」のなかで、最近の日本における保守論壇の劣化を嘆いている。斎藤によれば、保守論壇の劣化は、小泉政権の頃から始まったのだそうだ。この頃から、保守論壇は権力にこびるようになり、"保守政権に無条件で服従しない奴はみんな敵だ、サヨクだ"と叫んで、ネトウヨ化してきたということらしい。今回起きた「新潮45」の廃刊事件は、そうした保守論壇の劣化を象徴するもののようだ。

安部晋三総理がプーチンと会談した結果、懸案の北方領土問題については、1956年の日ソ共同宣言を基礎にして交渉を進めることになったと発言した。この発言をめぐって、さっそくさまざまな憶説が飛び交っている。政府としては、これは四島が日本に帰属するとした従来の立場を一歩も踏み出るものではないというような言い方をしているが、実際上は、歯舞・色丹の返還を上限とし、国後・択捉は永久に棚上げ、あるいは放棄することを意味している。

雑誌「世界」の最近号(2018年12月号)が「移民社会への覚悟」と題した特集を組んでいる。安倍政権が打ち出した実質的な移民推進策への反応だろう。安倍政権は、「これは移民ではない」と言い訳しながら実質的な移民の受け入れを進めようとしている。その背景には深刻な労働力不足があり、経済界からの外国人労働力の受け入れ要請がある。こうした事情を背景に、この特集は、日本の移民政策の問題点を指摘しているのだが、その論調には、やや首をかしげたくなるところがある。収められた論文の多くに、移民はいいことだ、あるいは避けられないことだという前提があって、日本が移民受け入れ国家としてどう対応していくかといったことばかりが強調され、そもそも移民政策がこの国の未来にどのような意味をもつのか、そしてまた、移民受け入れを拡大していくことが本当にいいことなのか、といった本質的な議論が置き去りにされている感じがあるからだ。

沖縄の知事選で、翁長前知事の後継者を任じる玉城氏が安倍政権の全面的支援を受けた候補者を破り当選した。この選挙を筆者などは、壮絶な死をとげた翁長市の弔い合戦と見ていたので、それが勝利するのを見て感慨深いものがある。

深刻な人手不足を背景に、経済界が外国人の受け入れを拡大して欲しいと安倍政権に強く要望したところ、安倍晋三総理はそれに応える決断をしたと言う。ただし条件付きで。これは移民を容認することではなく、あくまでも短期的な外国人労働の需要に応えるものだと。

NHKが放映した特集番組「駅の子」を見て、色々考えさせられた。「駅の子」というのは、戦後大量に生まれた戦災孤児たちが、上野を始めとした大都市の駅周辺にたむろしていた様子を表現する言葉だ。こうした戦災孤児は、大都市の駅に限らず、戦後日本のあちこちに大量にいたと思われるのだが、その実態についてはこれまであまり知られることがなかった。この番組はその間隙のようなものを埋めようとする意気込みが感じられ、その意味では評価できると思うのだが、なにせ戦後時間が経過しすぎたこともあり、全貌にせまることは出来ていない。

日本ボクシング連盟が、会長を先頭にして不正を働いていたというので、大騒ぎになっている。それを見ていると、どうもこれはボクシング連盟だけの問題ではなく、日本的な組織そのものの持つ病理と言うか、生理のありようが反映していると思わざるを得ない。

慣例に従って長崎の原爆平和記念式典に参加した安倍晋三総理が、何故あなたは被爆国の首相として核兵器禁止条約に署名しないのかと、被爆者の代表者たちから質問されたときに、その質問には答えないで、次のように言った。日本としては、核兵器保有国と非保有国との橋渡しをすることが大事だ、と。


翁長沖縄県知事が壮絶と言ってよい死を死んだ。辺野古への米軍基地建設を巡って安倍政権と鋭く対立し、内地の日本人の心ない中傷にさらされながら、沖縄人としての誇りと意地をかけて戦っていた最中での突然の死であり、その壮絶な死に方はまさに戦死と言ってもよかった。

広島で行われた原爆平和記念式典に、今年も安倍晋三総理は慣例にしたがって出席し、演説した。その演説には、広島の人々を始め核兵器の廃絶を願う人々が、安倍晋三が総理大臣として核兵器のない世界の創出への決意と、その具体的な意思表示として、122か国が賛成した核兵器禁止条約へ参加するように決意する言葉を期待したが、安倍晋三はこの条約の名も出さず、核兵器の廃絶を強く主張する言葉も言わなかった。数年前にオバマとともにこの式典に臨んだ時は、オバマと口裏をあわせるかのように、核兵器の廃絶を叫んでいたわけだから、これは大きな転換というべきだろう。

栃木女児殺害事件の控訴審判決で、一審の判決が、被告の自白した場面を録音・録画した映像から犯罪事実を認定したのは違法だと指摘したうえで、複数の状況証拠を総合的に判断して有罪だと認定し、あらためて無期懲役の判決を下した。この判決に対しては、法曹界から大きな批判で出ている。その批判を判決に照らし合わせながら読むと、我が国の刑事司法が抱えている問題点が浮かび上がって見える。それを一言でいえば、冤罪の温床がいまだそのままに残っているということだ。

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