立憲民主党の代表選に野田佳彦元代表が立候補すると聞き、小生は「うそつきに二度チャンスはない」という小文をブログで公開した。小生が野田をうそつきと呼ぶ理由は、当該ブログ記事にあたってもらいたい。野田が権力を失ったとき、多くの日本人はウソをついた報いと思った。今日でも、多くの国民はそう思っているのではないか。ところが立憲民主党のなかでは、そう思わない人が多いようだ。立憲民主党は野田を復権させることで、再び権力をとりに行くと意思表示したように解釈する向きもあるが、そう簡単に運ぶのか。
日本の政治と社会
検察審査会と聞いて小生がまず思い出すのは、政治家小沢一郎に対する強制捜査だ。これは検察が起訴しなかったものについて、検察審査会が二度にわたり審査した結果強制起訴に至ったものだが、その背後に極めて不健全な政治的意図を感じたものだ。一方で検察審査会は、伊藤詩織さんへの準強姦事件については、一貫して不起訴の立場を貫いた。そんなこともあって小生は、検察審査会にはあまりいい印象を持っていなかった。そんな検察審査会を、欠点・利点含めて多面的に検証しようとする試みがある。デヴィッド・T・ジョンソンらによる研究「検察審査会―日本の刑事司法を変えるか」(岩波新書)と題するものである。
雑誌「世界」の最新号(2024年10月号)に、ハワイ在住のアメリカ人デヴィッド・T・ジョンソンの「日本ではレイプは犯罪なのか」と題した小論が掲載されている。日本におけるレイプ犯罪をめぐる司法や世論のあり方を批判したものである。その現状を論者は、「日本は性犯罪者の被害者にとって地獄」または「性犯罪者にとって夢のような狩場」とまで言っている。果たして日本はそんなひどい社会なのか。
立件民主党の代表選に、かつて同党の代表をつとめ、かつ首相をつとめた野田某氏が立候補するそうだ。野田某氏といえば、首相在職中に消費税増税を画策し、それがもとで政権を失った男だ。消費税の増税自体はたいした政治的な問題とは言えない。問題なのは、消費税を増税しないことを公約して選挙に勝ったにかかわらず、一旦政権を担うとその公約を反故にし、平然と増税に踏み切ったというその無節操な姿勢である。当時の大方の世論は、そのやり方を評して、平気でウソをつくといっていたものだ。
海上自衛隊の現場で、安全保障に関わる機密情報「特定秘密」の取り扱いを、資格のないものに担わせていた問題の責任をとって、海自トップの某海上幕僚長が引責辞任することとなった。これは、形式上は日本の法律違反について責任をとったというふうにみえ、大手メディアもそうした解釈をしているが、実際には米軍への申し開きのためだったと考えられる。
今回の都知事選の最大の争点は、神宮外苑の樹木の伐採など東京の緑の破壊だと思う。緑の破壊を許すのか、それとも許さずに守りとおすのか、東京都の有権者は重大な選択に直面している。現職の某都知事は神宮再開発の推進に前のめりであり、彼女の三選を許せば、東京の緑の破壊が進むのは間違いない。その現職は、事業者に緑の保存方法を考えるよう発破をかけているふりをしているが、それは批判をかわすための便法で、かりに事業者がなんらかの保存方法を示したとしても、現存の貴重な緑の大部分が破壊されることは目に見えている。そればかりではない、あの四列の美しい銀杏並木も、長期的には枯死する可能性が高い。
是枝裕和の監督デビュー作「幻の光」の上映会が8月から催されるそうだ。上映会を企画したのは映画のプロデューサーをつとめた合津直枝さん。合津さんは上映会の収益をすべて、輪島市の復興のために寄付するそうだ。合津さんがそんな決断をしたのは、この映画の制作にあたって、撮影の舞台となった輪島の人々に非常に世話になったからだという。当時、監督の是枝も、主演の江角マキコも無名だった。そんな彼らを輪島の人々が応援してくれた。その恩義を、今回輪島の人々にお返ししたいということらしい。
岩波の雑誌「世界」の最新号(2024年7月号)が「スポーツと権力」と題する特集を組み、その一環として「神宮外苑再開発とスポーツ利権を問う」と題する対談を掲載している。対談者は、都市再開発に詳しい大方潤一郎とジャーナリストとして神宮外苑再開発問題にかかわってきた佐々木実である。二人はこの問題を、スポーツがからんだ利権という構図で読み解いている。事態の背景や法的問題がよく整理されていて、わかりやすい。
いわゆる「セキュリティクリアランス」制度に関する法律が4月10日成立した。これは経済安全保障に関する重要情報の取り扱いを国が認めたものに限定するという内容のものである。この法案が有する問題点は、雑誌「世界」の最新号(2024年6月号)に掲載された「『セキュリティクリアランス』制度の何が問題か」という小文(高山佳奈子著)が指摘していた。今回成立した法律は、その指摘通りに非常に問題の多いものと思われる。
岩波の読書誌「図書」(2024年5月号)が、「路上より」と題する柳広司の小文を掲載している。これは、イスラエルによるガザのジェノサイドをやめさせようと、自分のできる範囲で必死に頑張っている様子を書いたものだ。柳は、このジェノサイドを、かつての沖縄の人々が被った苦悩と比較している。あの時には、沖縄本島に上陸した米軍に追われ、島の南端の摩文仁の丘から海に追い落とされた人々が多数いた。沖縄では、住民の四分の一が殺された。ガザのジェノサイドはそれを思い起こさせる、というのだ。
イスラエルによる自国大使館への不法な攻撃にイランが反撃したことをめぐり、欧米諸国はこぞってイランを非難した。それにあわせたのだろう、日本の某外務大臣もイランを非難した。これについては典型的なダブルスタンダードだとの批判がある。イスラエルの国際法を無視した不法な攻撃には目をつぶり、イランだけを一方的に避難しているからだ。紛争の原因を作ったものの責任は棚上げして、反撃したものの責任ばかり云々するのは筋の通らない話だ。
NHKスペシャル番組「未解決事件」シリーズのFile10「下山事件」を見た。前後二編で構成され、前半はドラマ仕立て、後半はドキュメンタリー仕立てになっている。前半がよくできていた。森山未来演じる検事の布施健が、事件の真相を追い、ついに真犯人を突き止める経緯を描く。真相は、アメリカの占領当局が、国鉄への見せしめとして行ったというものだ。当時日本はアメリカの統治下にあり、アメリカを刑事犯として裁くことはできなかった。しかし、1952年に独立を回復した以後も、日本の検察はアメリカに対して遠慮しつづけた。そのことは検察に後ろめたさを感じさせる要因となり、検察はその意趣晴らしのために後日ロッキード事件を裁いた、というような構成になっている。ロッキード事件を総指揮したのは、下山事件を担当した布施だったので、意趣晴らしというのは非常に説得力のある見方だ。
雑誌「世界」の最新号(2024年3月号)が「さよなら自民党」と題する特集を組んでいる。今大騒ぎになっている自民党各派閥の裏金問題が、自民党にとってどんな問題を投げかけているのかを批判的に検証するような内容である。最も迫力を感じたのは、佐々木毅と山口二郎の対談。「90年代政治改革とは何だったのか」と題するこの対談のなかで、佐々木は、30年前にも同じような不祥事(リクルート事件)が起き、そのために政治改革をやったはずなのに、その改革の理念がちっとも実現せずに、またぞろ同じような不祥事が起きたと言って、自分たちの対談が失われた三十年を地で行くようなものになるんじゃないかと「恐れている」と言う。
日本のGDPがドイツのそれに抜かれ、今までの三位から四位に転落したそうだ。その原因は対米為替レートで円安になったためで、名目上の比率ではドイツに抜かれたが、実質的にはそんなに悲観することではないという意見もあるようだが、円安を含めて日本の経済力が弱まっていることを反映したものだととらえるのが自然なことであろう。
大川原化工機冤罪事件については、小生は雑誌「世界」の最新号(2024年1月号)に寄せられた文章「大川原化工機『冤罪』事件の深層」(石原大史)によって知った。これは事件を取材したNHK記者によるもので、警視庁公安部による恣意的な犯罪捜査を厳しく批判したものであった。事件の概要と批判の内容については、当該文章にゆずるとして、その事件をめぐって起こされていた損害賠償請求訴訟の一審判決が12月27日に東京地裁で出されるというので、それを注目していた。地裁は、国(検察庁)と都(警視庁」の責任を認め、賠償を命じる判決を出したそうだ。賠償額は国が約1億5800万円、都は約1億6200万円である。
岩波の雑誌「世界」の最新号(2024年1月号)の第二特集は「ディストピア・ジャパン」である。岩波が出版した「日没」の作者桐野夏生へのインタビューを含んでいるので、おそらくこの特集がイメージしているディストピアとは桐野の問題意識につながるのであろう。その桐野は、自分の小説が「反社会的」と受け取られている風潮に危うさを感じているという。そうした風潮は一般の国民たちによって担われており、それを権力が利用するとディストピアが実現してしまう怖さがある。コロナがそうした風潮を後押しした。自粛警察とかマスク警察といった現象は、国民による下からの検閲だ。国民の間に広がるこうした不寛容さに、桐野は日本人の本質を見た気がするという。
国策の半導体企業として岸田政権が前のめりになっいるラピダス。政府はその育成に1兆円を投じる方針だそうだ。名目は経済安保というので、反対する者はいない。だが、果たして成功するかどうかについては、懐疑的な見方が多いようだ。半導体産業は、一時は日本が世界をリードしていたこともあって、政府はその復活に執念を持ち、電器産業を結集してエルピーダを立ち上げた経緯があるが、失敗に終わった。今回もその轍を踏むのではないかと危ぶむ見方が多いのだ。
国民民主党が立憲民主党の挨拶を断るなど、距離を置く姿勢を強めている。立憲側は、次の衆議院選挙に向けて野党の連係を模索し、その一環として党首対話を呼びかけたのだが、国民側からそれを拒絶した。理由は、立憲が共産党との連携に前向きな姿勢を見せていることだ。国民は反共が党是のようなので、共産党と連係しようとする党とは一緒に行動できないということらしい。
雑誌「世界」の最新号(2023年11月号)が、「大阪とデモクラシー」と題する特集を組み、七本の小文を掲載している。大阪とデモクラシーの関係といえば、維新の会のことが真っ先に思い浮かぶが、この特集は、維新をとりげたもののほかに、万博問題とか子供の本のこととか、結構幅広くカバーしている。
雑誌「世界」の最新号(2023年11月号)が、「劣化したリーダーはなぜ増えたのか?」と題して、辻野晃一郎と立石泰則の対談を掲載している。辻野はソニー出身の実業家、立石は実業界を取材するジャーナリストだそうだ。それぞれの立場から、今の日本のリーダーの劣化ぶりを指摘している。どちらも実業界とその周辺に身を置いているから、勢い実業界のリーダーを話題に取り上げる。かれらによれば、実業界のリーダーの劣化は、なににもまして日本の劣化ぶりを物語っているということらしい。
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