世界情勢を読む

今年のノーベル平和賞は、エチオピアの現職首相であるアビーに付与されることになった。理由はアフリカの平和に貢献したということだ。ところがエチオピアでは、アビーの強権的な政治に反発する人が多くいて、それらの人々がアビーの退陣を求めてデモを行ったところ、治安部隊が出動して、67人の死者が出る惨事となった。ノーベル平和賞とこのデモとの関連は、いまひとつはっきりしないが、エチオピアの反アビー勢力が、アビーがノーベル賞を受けることを喜んでいないことだけは確かだ。そんなことから、ノーベル平和賞がアビーに授与されることが、結果としてこの惨事をもたらしということも、否定できないようである。ノーベル平和賞が、アビーの強権政治を合理化するのを許せないというわけであろう。

仮想通貨といえば、とりあえず思い浮かぶのはビットコイン。いまのところビットコインに代表される仮想通貨は、金融の末端として位置付けられているが、そのうち金融の仕組を根本的に変えるかもしれない。フェースブックが計画しているリブラなどは、もし実現したら、貯金や金融決済の有力な担い手として、既存の金融秩序に割って入り、場合によっては、それに置き換わる可能性も論じられている。

トランプ弾劾に向けての米議会下院での調査が進行しているが、つい最近まで、下院による弾劾は成立しても、上院での弾劾裁判でトランプが大統領を罷免されることはありえないというのが、大方の観測だった。ところが、この二・三日の間に情勢が急転し、もしかしたらトランプ罷免はありうるかも、という憶測が公然と語られるようになった。

トランプがウクライナの大統領ゼレンスキーに対して、最大の政敵であるバイデンを標的にして、自分の再選に都合のよいように、バイデンを犯罪者に仕立て上げるべく捜査介入をするよう圧力をかけた、いわゆるウクライナゲート事件が、下院による弾劾調査手続きの開始に発展した。トランプはこれまでにもさまざまな疑惑に包まれてきたにかかわらず、ことごとく乗り切って来た。それが今回はいよいよ弾劾の手続きに直面する可能性が高くなったわけだ。ことの影響度からいえば、ロシアゲートのほうが上回っていると思われるのだが、そのロシアゲートがうやむやになって、ウクライナゲートが脚光を浴びることには、なにか理由があるのか。一外国人である小生には、いまひとつわからないことが多い。

フランスで行われた今年のG7サミットは、従来恒例だった共同声明の作成・発表を見送った。アメリカのトランプと、ヨーロッパ諸国の指導者との間で意見の隔たりが大きく、一致した見解をまとめることができなかったためだ。それにはトランプの一国主義が作用している。トランプは、昨年も一国主義の立場から、カナダが中心に作成した共同声明に異議を唱えたが、今年はその作成自体をボツにさせたわけだ。

トランプの激しい人種差別攻撃は、ボルティモア選出の黒人議員カミングズに向けられ、トランプはカミングズなみならず、彼を連邦議員に選んだボルティモアまで、口汚く攻撃した。ボルティモアは不潔な町で、鼠だらけであり、まともな人間の住むところではないというのだ。これは、坊主憎けりゃ袈裟まで憎しのたぐいなのだろうが、罵られたボルティモアの人びとは心穏やかではないだろう。人種差別主義者としていまや自他ともに認めるトランプだが、なにしろアメリカ合衆国の大統領なのだ。その大統領からこんなふうに罵られたら、誰でもいい気持ちがするはずはない。

トランプのレーシズムはいまに始まったことではないが、最近は人種差別的言動が一段とヒートアップしている。先日は、非白人の女性国会議員四人に対して、自分がそこからやってきた国へ帰れと言った。それがあからさまな人種差別だというので、下院が非難決議をしたところ、下院が民主党優位であることを引き合いにして、民主党のペテンだと罵って平然としている。また、自分を批判するメディアに対しては、フェイクニュースだといって取り合わない。

大阪で開かれたG20会合の焦点は、米中関係がどうなるかということだった。この会議を利用する形で、トランプと習近平がトップ会談を行ったので、それが両国間の緊張緩和をもたらすか、あるいは更なる対立の激化をもたらすか、国際社会は固唾を呑んで見守っていたにちがいない。なにしろ、米中の対立が激化して、全面的な戦争というような事態になれば、地球社会にとって、並大抵のことではない。

トランプが中国からの輸入に対して全面的に関税をかけると言って脅しているのに対して、中国の方も売られた喧嘩は買ってやるといった具合に、最大級の反発を見せている。このままだと、米中が全面的な経済戦争に突入する可能性は極めて高いようだ。そうなれば、米中双方が経済戦争で互いに傷つくばかりではない。日本のような第三国も深刻な影響を受けるだろうし、世界経済もかなりな打撃を蒙るに違いない。

先日このブログで、ネタニアフが勝利した背景には、イスラエルのユダヤ人コミュニティが右傾化していることをあげた。その右傾化の実態について、雑誌「世界」の最近号(2019年6月号)に寄せた池田明史の小文が分析している。それによればイスラエルは、もはやネタニアフが穏健な中道に思えるほど、全体として右傾化が進んでいるということらしい。

ユダヤ人に対する攻撃が世界中で激化している傾向について、イスラエルの研究者たちが憂慮を表明しているそうだ。テル・アヴィヴ大学の研究者たちによれば、昨年一年間で、世界中のユダヤ人を標的にした攻撃は400件にのぼり、前年より13パーセント増加した。そのうちの四分の一はアメリカでおきたもので、その中には昨年ピッツバーグのシナゴーグで11人の死者を出したテロも含まれている。こうしたユダヤ人攻撃は今年に入っても続き、先日はカリフォルニアのサンディエゴのシナゴーグが襲撃される事件が起こったばかりだ。

19世紀末から20世紀前半にかけて、ユダヤ人から多くの天才といわれる人々が輩出した。フロイト、アインシュタイン、ウィトゲンシュタインといった人々はその代表的なものであり、また世界のノーベル賞受賞者の四分の一はユダヤ人である。わずか一千万人ほどの人口規模しかもたないこの民族がなぜ、かくも多くの天才・秀才を生み出したのか。さまざまな憶測がなされている。その中には、ユダヤ人の人種的な優秀性を指摘するものもあれば、ユダヤ人の教育システムの効率性を指摘するものもある。そんななかで最も即物的な説明をしているのが、当のユダヤ人であるハンナ・アーレントだ。

日頃NYTをフェイク・ニュースだといって攻撃しているトランプが、今回は史上最大級といってよい攻撃を、ツイッター上でNYTに加えた。その鼻息は荒い。NYTは、自分を侮辱したかどで、自分に対して二度目の謝罪をすることになる。それは生半可なものではない、我が前で膝を屈して、我が慈悲を乞わねばならない、というものだった。

先般イスラエルで行われた総選挙で、汚職疑惑などがもとで劣勢を取りざたされてもいたネタニアフが、与党リクードの勝利の結果、五期目の首相を務めることになった。このことの背景には、トランプによるネタニアフの強力な応援とか、経済を始め好調な国内情勢とかが指摘されもするが、根本的な要因はイスラエルのユダヤ人が極右化しているということだろう。ネタニアフはそうした動きを反映しているに過ぎない。これは、トランプがアメリカ国民の右傾化傾向を反映しているのと似たような事態だ。

中国ではいま「ゴマ信用のスコア」というのが流行っているのだそうだ。これはIT企業の大手アリババが四年前に始めたサービスで、個人の信用度をスコアであらわし、金融取引などに役立てようというものだ。このスコアは、目下個人の申し出に基づいて作成され、その個人の資産状況とか返済能力などの信用度を数値化し、それを金融取引等の判断材料にするというものだ。このスコアが高いと、簡単に融資が受けられるし、不動産取引なども有利に進めることができるという。これまでの中国では、信用取引に関しては保証人を立てるのが一般的だったが、このスコアがそれにとって代わりつつあるという。たとえば、賃貸住宅を借りたいと思ったら、大家から、保証人のかわりに「ゴマ信用のスコア」の提示を求められるのだそうだ。

米国土安全保障長官のキルステン・ニールセンが、事実上トランプに更迭される形で辞任した。理由は、移民に対する彼女の対応が生ぬるいということらしい。とはいっても、移民政策に関する彼女の対応は、米国の移民政策の歴史の上で例を見ないほど過酷で無慈悲なものとして有名だった。なにしろ、物心のつかないような小さな子供まで親から取り上げて収容所にぶち込むようなことを平気でしてきた人間だ。その無慈悲な彼女でも、トランプの眼には生ぬるいと映ったのだろう。

雑誌「世界」の最近号(2019年4月号)は、「権威主義という罠」と題する特集を組んでいて、現在世界中に蔓延している権威主義的な政治について多面的な分析を披露している。それを読んで感じたことを、ここにメモとして書いておきたい。

トランプのいわゆるロシアゲート疑惑を調査してきたマラー特別検察官が、二年近い調査にくぎりをつけて、司法省のボスであるバーに報告書を提出した。その報告書に基づいてバーが手短なレジュメを用意し、それを議会の司法委員会始め各方面に発表した。その概要を簡単に言えば、有罪とは断定できないが無実とも言えないというものだった。要するに灰色ということだ。

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トランプと金正恩とのハノイでの会談には世界中が注目していたところだ。なにしろ金正恩は、三日間にわたる鉄道の旅を経てわざわざハノイ迄やってきたのだし、トランプも金正恩との間でディールを成立させることに熱心だった。ところが蓋を開けてみると、会談はあっさりと破綻し、物別れに終わった。共同会見もしないまま、金正恩とトランプは自分の国に向けて帰って行った。

トランプの対中強硬政策が世界中の耳目を集めているが、対中強硬姿勢はトランプとその仲間だけではなく、ほとんどのアメリカ人に共通するものらしい。昨日(2019/02/23)の朝日には、ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、デヴィッド・ブルックスの「中国の脅威」と題した小文が掲載されていたが、それを読むと、いまやすべてのアメリカ人にとって、中国は深刻な脅威であって、いまのうちに潰しておかねばならない敵だと認識されている様子が伝わって来る。また、今日の朝日には、一旦中国企業に発注したワシントン地下鉄の車両を、それがアメリカの機密をスパイする恐れがあるという理由で、キャンセルする動きがあることを伝えている。こうしたアメリカ人の動きは、どうもパラノイアに属するもので、過去のある時期に流行った黄禍論の再来を思わせる。

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